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M&Aにおける労務DDの重要性と社労士による労務DDの必要性(2025/5/1)

M&A(企業の合併・買収)において、労務デューデリジェンス(DD)は、取引の成功にとって非常に重要なプロセスです。労務DDは、買収対象企業の労働環境人事制度法的リスクなどを徹底的に調査することにより、買収後の経営リスクを最小限に抑えるための鍵となります。しかし、労務面の問題は時に見過ごされがちであり、後々の経営課題に繋がることがあります。そのため、専門知識を持つ社労士による労務DDは、M&Aにおいて必須の要素と言えるでしょう。

ここでは、労務DDが企業に与える影響と、社労士による労務DDの必要性を具体的な事例を交えて解説します。

事例1: 未払い残業代と労働法令違反のリスク

ある企業がM&Aのターゲットとして買収を検討していた際、労務DDにより未払い残業代労働法令違反の問題が明らかになりました。具体的には、給与体系の不整合や、残業時間の管理不備、そして過去に従業員から訴訟を受けた履歴が発覚しました。


事例2: 過大な人件費と労働契約の不整合

別のM&A事例では、買収対象企業の人件費が業界相場を大きく上回っていたことが判明しました。具体的には、過去に経営者が従業員の給与引き上げを行ったものの、実際の業績市場価値に見合っていなかったため、買収後にコスト削減を強いられる可能性がありました。


事例3: 退職金制度の不備と未積立金

ある企業が買収した企業では、退職金制度の積立金不足が問題となりました。買収対象企業は、退職金制度を長年見直しておらず、未積立金額数億円に達していたことが判明しました。このまま買収を進めれば、将来的な負債法的問題を引き起こす可能性が高かったのです。


社労士による労務DDの必要性

上記のような事例を踏まえると、社労士による労務DDの必要性は非常に高いことがわかります。社労士は、労働法規や社会保険、労働契約、給与体系、福利厚生制度、退職金制度などに精通した専門家であり、M&Aにおける労務面のリスクを適切に評価し、買収後に発生する可能性のある問題を未然に防ぐために欠かせません。

具体的には、社労士が行う労務DDは以下のような重要な役割を果たします:

  1. 法的リスクの特定と回避: 社労士は、労働契約書、就業規則、給与規定などが労働基準法や社会保険法に適合しているかを確認し、労働法令違反未払い賃金などのリスクを事前に発見します。これにより、買収後の法的トラブルを防ぎます。

  2. 人件費の適正化: 労務DDを通じて、給与体系人件費のバランスが適正であるかを確認します。過剰な人件費を削減し、買収後に財務状況の安定化を図ることができます。

  3. 労働環境の評価と改善提案: 労務DDでは、従業員の労働環境福利厚生制度が整備されているかも調査します。買収後の統合に向けて、社員の満足度モチベーションの向上を図るためのアドバイスも行います。

  4. リスク管理の強化: 社労士は、買収後に発生するリスクを事前に想定し、リスク回避策改善策を提供します。これにより、M&A後の統合プロセスをスムーズに進め、企業価値を最大化することができます。


まとめ

M&Aにおける労務DDは、買収後のリスクを最小限に抑え、企業統合を円滑に進めるために不可欠なプロセスです。社労士による労務DDは、法的リスクの回避人件費の適正化労働環境の改善など、M&Aの成功に向けた重要なステップをサポートします。社労士の専門的な知識と経験を活用することで、買収後のリスクを予測し、適切な対応策を講じることができます。

M&Aを進める上で、労務面のリスク管理をしっかりと行いたいと考えている企業の皆様には、ぜひ社労士のサポートを受けることをお勧めします。

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