【名古屋市の中小企業必見】業務改善助成金で賃上げと職場改善を支援|制度の正しい使い方とチェックリスト付き(令和7年度版)(2025/8/5)
■ はじめに:助成金は“お金がもらえる制度”ではありません
令和7年度、「業務改善助成金」への関心が高まっています。
検索数も急増し、相談件数が増えている社労士の方も多いでしょう。
しかし、ここでひとつ、はっきり申し上げます。
✅ 業務改善助成金は、「賃上げを行い、生産性向上の取組を実施した企業」に対して、その費用の一部を支援する制度です。
つまり、
「まず賃上げ」があり、
「その賃上げを支える業務改善」に対して、国が支援を行うという構造。
助成金はあくまで“挑戦を後押しする手段”であって、
「もらえるお金」ではありません。
■ なぜ賃上げだけではいけないのか?
賃金を上げるということは、それだけ企業の固定費(人件費)が増えるということです。
当然ながら、それを上回る生産性の向上(=労働1時間あたりの付加価値の増加)がなければ、経営は圧迫されます。
制度はこう言っています:
「賃上げしたのなら、あなたの職場は業務改善が必要なはずです。
その改善にかかった費用の3/4(4/5)を支援します。」
これが制度の“正論”であり、本来の趣旨です。
■ 制度のポイントを整理(令和7年度)
区分 | 内容 |
✅ 対象 | 中小企業で、一定の賃上げを実施した事業場 |
✅ 前提条件 | 雇用から6か月経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げる |
✅ 生産性向上 | 業務改善・設備投資・教育訓練などの取組が必要 |
✅ 助成額 | 経費の最大 3/4(小規模は4/5)を助成、上限額は賃金引上げ額×人数で決定 |
✅ 経費例 | 生産ラインの動線見直し、作業場レイアウト変更、レジシステム、業務マニュアル整備、従業員研修、経営コンサルティングなど |
✅ 相見積 | 原則2者以上(10万円未満は不要) |
✅ 支払時期 | 原則、交付決定後~令和8年1月31日までに実施・支払 |
✅ 同一年度内の申請 | 事業場ごとに1回まで、企業全体で年間上限額600万円まで |
■ 令和7年度の申請スケジュール
申請期 | 受付期間 |
第1期 | 令和7年 4月14日~6月13日 |
第2期 | 令和7年 6月14日~都道府県の地域別最賃改定日前日 |
第3期以降 | 現時点では未発表(※例年10月前後に追加公表) |
💡 賃上げ前に申請、交付決定を受けてから設備導入等の契約・支払いを行う必要があります。
タイミングを誤ると助成対象外になるため、社労士の関与が重要です。
■ 賃上げしたからには、業務改善が要る
賃上げした人数が多ければ、それだけ生産性向上のプレッシャーも増します。
「お金が出るから設備を買う」のではありません。
「賃上げを支える職場づくり」に投資することが、本来の目的です。
■ ✅詳細セルフチェックリスト(令和7年度・社労士監修)
ご自身の事業場が対象になるかどうかを、以下の24項目で確認してみてください。
【A. 基本要件】
No | チェック | 内容 |
A1 | ☐ | 中小企業の範囲に該当している(資本金・常用労働者数) |
A2 | ☐ | 「みなし大企業」に該当しない(株式保有・役員構成) |
A3 | ☐ | 労働保険に加入済みで、滞納がない |
A4 | ☐ | 法定3帳簿(賃金台帳・出勤簿・労働者名簿)を整備している |
A5 | ☐ | 就業規則・賃金規程に「事業場内最低賃金」を明記または追記予定 |
【B. 賃金引上げの要件】
No | チェック | 内容 |
B1 | ☐ | 雇用から6か月以上経過した労働者が1人以上いる |
B2 | ☐ | 地域別最賃との差が50円以内である(または今後縮小予定) |
B3 | ☐ | 引上げ額がコース要件(例:30円以上など)を満たしている |
B4 | ☐ | 就業規則に反映し、引上げ賃金が明確に示されている |
B5 | ☐ | 所定労働時間や日数を減らさずに賃金を引き上げる予定 |
B6 | ☐ | 歩合制や変動給でも、時間換算が可能な仕組みがある |
【C. 設備投資・制度導入の要件】
No | チェック | 内容 |
C1 | ☐ | 生産性向上に資する取組(設備投資・制度導入等)を行う |
C2 | ☐ | 投資予定額が10万円以上(税抜)である |
C3 | ☐ | 他の補助金との併給がなく、単独経費として申請可能 |
C4 | ☐ | 交付決定を受けてから、契約・支払いを行う予定である |
C5 | ☐ | 原則、相見積(2社以上)を取得予定(10万円未満除く) |
【D. 申請・報告に関する体制】
No | チェック | 内容 |
D1 | ☐ | 申請期に間に合うようスケジュール管理ができている |
D2 | ☐ | 必要な見積書・契約書を揃えることができる |
D3 | ☐ | 実績報告時に、賃金台帳・出勤簿・通帳写し等を提出可能 |
D4 | ☐ | 賃上げ後の賃金を実際に支払う時期を把握している |
D5 | ☐ | 30万円以上の設備について、処分制限ルールを理解している |
D6 | ☐ | 社労士・税理士などの専門家と連携できる体制がある |
✔ 判定の目安
- ✅ 20項目以上該当:申請可能性が高く、制度活用の準備が整っている
- ✅ 15〜19項目該当:一部整備で申請可能。社労士の支援が有効
- ✅ 14項目以下:制度要件を満たす前に体制整備が必要
■ 社労士としての立場から伝えたい
助成金は「制度活用のご褒美」ではありません。
賃上げの覚悟と、職場を変える意志を持つ企業に、
「では一緒に改善しましょう」という国からのエールです。
制度を活かして企業を強くしたい方、
ご自身での申請が不安な方は、社労士にご相談ください。