特定技能「外食業」受入停止が示す本質 ― 人手不足の正体は“採用難”ではなく労務管理にある BHR推進社労士の視点から(2026/4/11)
2026年、外食業分野において、特定技能(1号)の外国人労働者の受入が、上限5万人に達する見込みとなり、政府は2026年4月13日から新規受入を原則停止すると発表しました。
すでに2026年2月末時点で、外食業に従事する特定技能(1号)人材は約4万6,000人。
このペースで増加すれば、数か月以内に上限到達は確実とされています。
一方で、外食業の就業者数は約400万人規模であり、特定技能人材の割合は全体の1%強にとどまります。
この点について、農林水産省は
👉「直ちに影響が出る状況ではない」
との見解を示しています。
■では、なぜ“受入停止”なのか
ここに、この問題の本質があります。
表面的に見れば、
〇 全体の1%程度
〇 直ちに影響なし
であれば、「大きな問題ではない」とも受け取れます。
しかし実態は全く逆です。
■異常なのは「割合」ではなく「増え方」
直近2年間の統計では、外食業における就業者増加の9割以上を特定技能人材が占めていたとされています。
これは極めて異例です。
つまり、
👉 新たに増えた人材のほとんどが外国人だった
という構造です。
■この構造が意味するもの
本来、労働力不足に対して企業が取るべき行動は明確です。
〇 賃上げ
〇 労働環境の改善
〇 業務の効率化
〇 定着率の向上
しかし、現実には
👉 これらを飛ばして「外国人で埋める」動きが加速していた
可能性があります。
■「直ちに影響はない」の本当の意味
農林水産省の「直ちに影響はない」という発言は、
裏を返せばこういうことです。
👉 “これまでの増え方が異常だった”
からこそ、
👉 止めてもすぐには困らない
という構造になっている。
■問われているのは“人手不足”ではない
今回の受入停止は、
👉 人手不足の問題ではなく、労働市場から選ばれていない構造の問題
です。
■現場の実感と、見落としてはいけない視点
外食の現場にいる方であれば、多くがこう感じているはずです。
〇 大手チェーンでは明らかに外国人材が増えている
〇 中堅規模の店舗でも、現場を支えているのは外国人材である
〇 真面目で、よく働き、戦力になっている
これは事実です。
そして、この事実自体を否定する必要はありません。
■しかし、その先を考えなければならない
問題は、その状況をどう捉えるかです。
ありがちな説明はこうです。
〇 少子高齢化だから仕方ない
〇 日本人が働きたがらない
〇 人手不足は構造的な問題
しかし、この説明で止まってしまうと、
👉 企業側の責任が見えなくなります
■BHRの視点で見ると何が変わるか
ここで重要になるのが、
国際労働機関や国連が示すBHR(ビジネスと人権)の考え方です。
BHRの基本はシンプルです。
👉 企業は、自らの事業活動における人権への影響に責任を持つ
ということ。
■「外国人が頑張っている」が覆い隠すもの
外国人材が現場を支えている――
これは一見、前向きな話にも見えます。
しかし同時に、
👉 「なぜその構造になっているのか」への視点を鈍らせていないか
という問題があります。
■見て見ぬふりをしてきた可能性
例えば、
〇 日本人が定着しない職場
〇 離職率が高い現場
〇 業務負荷が偏っている環境
こうした課題があるにもかかわらず、
👉 外国人材によって現場が回ってしまっていた場合
本来行うべき改善が、先送りされていた可能性があります。
■“少子化”という前提の中で考えるべきこと
少子化が進んでいる以上、人材確保が難しくなっているのは間違いありません。
その中で、
〇 人が集まりにくい職場
〇 比較的安定して採用・定着している職場
が分かれてきているのも現実です。
👉 同じ環境の中でも結果に差が出ている以上、見直せる余地がある部分も存在する
と考えることができます。
■ディーセント・ワークの観点からの再整理
この問題を整理する上で重要なのが、
ディーセント・ワークの視点です。
〇 適正な賃金
〇 安全な環境
〇 尊厳ある扱い
〇 将来の見通し
これらが満たされていない場合、
👉 人が来ないのは“当然の結果”です。
■これから起きる現実 ― 静かな淘汰
受入停止によって、今後は次のような分岐が起きます。
〇 人材確保ができない企業
〇 離職が止まらない企業
〇 外国人材にも選ばれない企業
これらは、時間の問題で市場から退出していきます。
一方で、
〇 労務を見直した企業
〇 働きやすさを整備した企業
〇 人材を「コスト」でなく「基盤」と捉えた企業
は、
👉 日本人にも外国人にも選ばれ続ける企業になります。
■これは“外国人労働者の問題”ではない
今回の問題は、
👉 外国人材の問題ではなく、企業の労務管理の問題です。
制度は鏡に過ぎません。
映し出されているのは、企業の現実です。
■中堅企業にこそ求められる視点
大企業のように資本で解決することはできない。
小規模事業のように属人的にもできない。
その中間にある中堅企業こそ、
👉 “仕組みで回す労務管理”への転換が必要です。
■7.では、あなたの職場はどうか― 現場からの見直しのすすめ
ここまで読んでいただいた方の中には、
「自分の職場は大丈夫だろうか」と感じた方もいるかもしれません。
特定技能制度の受入停止は、単なる制度運用の問題ではなく、
職場のあり方そのものが問われている出来事です。
■簡易チェック(現場目線)
☑ 人手不足の理由を「採用難」で片付けていないか
☑ 定着率(特に入社1年以内)を把握しているか
☑ シフト・労働時間が属人的になっていないか
☑ 外国人任せの現場になっていないか
☑ 「なぜ辞めたのか」を分析しているか
もし一つでも引っかかる場合、問題は“人手”ではなく、
👉 労務管理や職場環境にある可能性が高いです。
■対応の方向性(シンプルです)
〇 労働時間の見える化
〇 業務の切り分け(属人化の解消)
〇 離職理由の把握
〇 外国人・日本人を分けずに同じ基準で見る
■専門家としてできること
私は、社会保険労務士として、
〇 外国人労働者を含めた労務管理の整理
〇 現場ヒアリングによる課題の可視化
〇 実際に回る仕組みづくり
を支援しています。
👉 「制度」ではなく「現場」に合わせることを重視しています。
■ご相談について
営業的な提案は行っていません。
まずは状況整理からで構いません。
■お問い合わせ方法
〇 【お問合せはコチラから】
〇 初回相談:オンライン可(30〜60分)
■最後に
今回の受入停止は、
👉 「人が来ない理由と向き合う時期に入った」
というシグナルです。
外国人材に選ばれる企業は、
同時に、日本人にも選ばれる企業です。
そしてそれは、
当たり前の労務管理の積み重ねでしか実現できません。
BHR推進社労士が企業にどのような価値を提供できるかについては、
「ビジネスと人権に取り組むBHR推進社労士の魅力」で整理しています。
人権調査票やサプライチェーン調査への実務対応については、
「人権デューデリジェンスとは?中小企業が対応すべき調査票と外国人雇用リスク」で整理しています。
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