「体調不良で事故」は防げる──健康起因事故倍増が示す企業の責任(2024/10/9)
国土交通省関東運輸局は、昨年度に関東地域で発生した事業用自動車の交通事故状況を公表した。
運転中に健康状態が悪化したことにより発生した「健康起因事故」は168件となり、5年前の87件から倍増している。
このうち、事故には至らず運転を中断したケースは121件だった。一方で、物損事故は27件、人身事故は20件発生している。
業態別では、バスが95件と最も多く、トラックが39件、ハイヤー・タクシーが34件と続く。
関東運輸局は今後、業態ごとの発生状況を分析し、事例の周知を通じて事故防止に取り組む方針を示している。
特にタクシー業態では、健康起因事故に加え、出会い頭の衝突事故の割合も高く、対車両事故の2割を占めている。
■BHR視点:健康起因事故は“個人の問題”ではない
このデータが示しているのは、単なる事故件数の増加ではない。
むしろ、運転者の健康状態が安全に直結する構造的リスクが顕在化しているという点である。
BHR(ビジネスと人権)の観点では、企業は労働者の安全と健康を確保する責任を負う。
とりわけ運輸業のように第三者の生命・身体に影響を及ぼす業種においては、その重要性は一層高い。
健康起因事故についても、
- 長時間労働や不規則勤務
- 健康管理体制の不備
- 異常時の申告がしにくい職場環境
といった要因が背景にある場合、
それは単なる個人の体調不良ではなく、企業の管理体制に起因する問題として捉える必要がある。
■「防げた事故」という視点
注目すべきは、121件が事故に至る前に運転を中断している点である。
これは裏を返せば、
👉 適切な判断と環境があれば、事故は回避できる
ことを示している。
しかし現場では、
- 体調不良でも運行を継続してしまう
- 代替要員が確保できない
- 評価や収入への影響を懸念する
といった理由から、異常が見過ごされるケースも少なくない。
■実務への示唆(安全配慮の設計)
企業としては、単に健康診断を実施するだけでなく、
運行中の異常を前提とした制度設計が求められる。
具体的には、
- 体調不良時の申告・中断ルールの明確化
- 中断しても不利益が生じない仕組み
- 点呼時の健康確認の実効性向上
- 管理者による継続的なフォロー
といった対応が不可欠である。
■結論
健康起因事故の増加は偶発的なものではない。
むしろ、予測可能であり、管理可能なリスクである。
だからこそ、
👉「事故が起きた後」ではなく
👉「異常が起きる前」にどう対応するか
が問われている。
安全とは結果ではなく、設計である。
この視点を持てるかどうかが、企業の責任の分かれ目となる。
■出典
労働新聞「健康起因事故が5年前から倍増 関東運輸局」
国土交通省関東運輸局発表資料
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