【安全配慮義務違反】ルール未徹底で会社責任 それでも労働者に2割過失 東京高裁が判断(2024/12/21)
製鉄所内で発生した重機接触事故について、東京高等裁判所は、会社の安全配慮義務違反を認めつつ、労働者側にも2割の過失があると判断しました。
この事案のポイントは、「ルールがあったかどうか」ではなく、そのルールが現場で機能していたかにあります。
事故が起きた現場では、複数企業の労働者が入り混じり、重機が頻繁に行き交う危険な環境でした。そのため、各社間で「作業範囲への無断立入を禁止する」というルールが設けられ、会社も安全作業動作標準を定めていました。
しかし実際には、別の車両が許可なく作業範囲内に進入し、停車していました。つまり、ルールは存在していたものの、現場では守られていなかったという状況です。
裁判所はこの点を重視しました。
安全配慮義務とは、単に規程やルールを整備することでは足りません。労働者の職種や作業環境に応じて、危険を現実的に防止できる体制を構築し、かつそれを現場で機能させて初めて「義務を尽くした」と評価されます。
本件では、複数企業が関与する作業環境である以上、ルールの周知や監督、実効性の確保まで含めた安全管理が求められていました。それが不十分であったとして、会社の責任が認められています。
もっとも、労働者側にも過失があるとされました。
労働者は、作業後に後方確認を行わずに車両を後退させています。裁判所は、後方確認は車両運転における最も基本的な注意義務であり、たとえ立入禁止ルールがあったとしても、「想定外の事態」が起こり得る以上、これが免除されることはないと判断しました。
結果として、会社の安全配慮義務違反を前提としつつも、労働者の過失を2割と認定しています。
■この判例から見る実務上のポイント
今回の裁判例が示しているのは、非常にシンプルです。
① ルールを作るだけでは不十分
→ 現場で守られているかどうかが問われる
② 複数企業が関わる現場ほど責任は重くなる
→ 自社だけでなく、全体の安全管理が必要
③ 労働者側の基本動作も免責されない
→ 基本的な安全行動(今回でいえば後方確認)は常に求められる
■BHR(ビジネスと人権)の視点
この判例は、BHRの観点から見ても重要です。
「安全で健康的な労働環境」は、国際的にも労働者の基本的人権として位置付けられています。
そして企業に求められるのは、「事故が起きた後の対応」ではなく、事故を防ぐための仕組みを実効性ある形で構築することです。
特に本件のように複数企業が関与する現場では、
- 誰が管理責任を持つのか
- ルールが現場で守られているか
- 想定外をどこまで織り込むか
といった点まで踏み込んだ設計が不可欠です。
■出典
労働新聞
「安全配慮義務違反 労働者の過失2割に 後方確認運転を怠り 東京高裁」
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