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長時間労働は、働く人の人権にも関わる問題です ~「ビジネスと人権」への理解と実践が、企業価値を高める鍵に~(2025/6/19)

長時間労働の是正に向けた取り組みが進んでいます

東京・中央労働基準監督署は、今年度の重点テーマとして「長時間労働の抑制」と「健康障害の予防」を掲げ、働く人の命と健康を守るための監督指導を進めています。

昨年、同署が実施した約3,000件の監督のうち、12.7%の事業場で違法な時間外労働が確認されました。特に目立ったのは、「36協定」で定めた時間を超えるケース。これは、企業自らが決めたルールが、現場では守られていない実態を示しています。



一流企業が集まる日本の中心部で起きていること

中央労基署の管轄には、千代田区・中央区・文京区・島しょが含まれ、全国の上場企業本社の約2割が所在しています。いわば、日本経済の中枢ともいえるこの地域で、こうした違反が見られることは、決して小さな問題ではありません。

企業側も、近年は「過労死ライン」とされる月80時間の残業を意識するようになり、時間外労働の上限を引き下げる動きも見られます。一方で、繁忙期などで定めた上限を超えてしまうケースも散見されており、運用上の課題が残されています。



「ビジネスと人権」の観点から考える長時間労働

働きすぎによる健康被害や過労死のリスクは、労働者の命や尊厳にかかわる問題です。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」でも、企業には人権を尊重する責任があると明記されています。

長時間労働は、その観点からも人権リスクとされ、場合によっては強制労働の懸念が指摘されることもあります。企業の皆さんにとっては、「法令遵守」の枠を超えた、人権尊重経営への第一歩として向き合うことが求められているのです。



かたちだけの対策ではなく、「実のある改革」へ

労働時間の上限を設定していても、現場で守られていなければ意味がありません。表面だけの対応ではなく、従業員が安心して働ける環境づくりを進めることこそが、本当の改革です。

働く人が心身ともに健康で、自分らしく力を発揮できる環境――それが「ディーセント・ワーク(人間らしい働き方)」の考え方です。
今後、日本を代表する企業こそが、こうした価値を大切にしながら「人権を尊重する働き方」のモデルとなっていくことを願っています。



最後に――「人権リスク」への備えは、企業の未来を守ることにもつながります

働き方を見直すことは、ESGやサステナビリティ経営、人的資本の観点からも非常に重要なテーマです。
「人権を守る経営」を実践することが、企業のブランドや信頼性を高める力にもなっていきます。



みなさんの職場では、長時間労働や働きすぎへの配慮はできていますか?
どう感じられましたか?


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