ゼロ災運動 「働きがい」ある職場へ 中災防が要綱策定(2024/12/26)
運動を実践していくためには、理念が重要になる。同運動は、人間尊重の基本理念に基づき、全員参加で安全を先取りし、労災を一切発生させることなく「ゼロ災害」、「ゼロ疾病」とするのを究極の目標としている。「職場の誰一人ケガをさせない」、「誰も病気にさせない」、「一人ひとりはかけがえのない人」などの人間を大切にする考えの基本には、「ゼロ」、「先取り」、「参加」の3つの原則がある。
「ゼロ」の原則は、単に死亡災害・休業災害がなければ良いということではなく、根底から労災をなくしていこうというものだ。事故・災害が起こる前に発見・把握・予測して危険の芽を摘み取るのを「先取り」という。「参加」は全員が一致協力して、それぞれの持場で自主的、自発的に問題解決行動を実践していくことを指す。この3つの原則を現場で具体化したものが、指差し呼称やKYTというわけだ。
昨年、同運動は50年という節目を迎えたが、その間にわが国の産業構造が変化し、労災の傾向が大きく変わった。製造業、建設業といった第二次産業が多数を占めていた状況が変わり、小売業、社会福祉施設などの第三次産業の就業者数が全体の7割を超え、転倒や腰痛などの行動災害が増えている。
一方、就業年齢の高齢化が進み、高年齢労働者の労災も増加に歯止めが掛からない状況だ。死亡者数は減少しているものの、休業4日以上の労災は増加傾向にあり、このうち約半数を第三次産業が占めている。
こうした状況のなか、時代を捉えた運動とするために、新たに要綱を策定した。人間尊重の基本理念や「ゼロ災害」、「ゼロ疾病」が目標なのは変わらないが、さらにその先を志向し「健康づくり」、「働きがい」といった視点に着目したのが特徴だ。安全と健康を先取りして、明るく生き生きとした職場づくりを進めていくとともに、高年齢化が進展していくなかで、健康不調を改善し、働きがいを感じながら仕事が継続できる社会環境をめざす内容となっている。
中災防の取組みとしては、第三次産業へ同運動の浸透を図っていくという。従来の手法にこだわらない短時間で行える安全衛生活動の開発や、小売業向けの新規研修を実施するとしている。
また、作業に伴う転倒や腰痛などの行動災害防止のため、ストレッチや体操を研修に取り入れる。これらを反映した小売業向けの研修を来年3月に無料で開催するとしている。
事業場に求める取組みとして、まずトップが人間尊重の理念を掲げることを挙げた。従業員の安全と健康を何より優先する姿勢を示し、その方針を明確にするとしている。管理監督者には、ゼロ災運動の意義を理解し、率先垂範を示すよう呼び掛けた。KYTなどに積極的に取り組むとともに、部下・仲間の心と体の健康に関心を持ち、風通しの良い職場をつくるよう要請している。
(以上 労働新聞より)
中央労働災害防止協会が行っているのは、まさしく「ビジネスと人権」の取組です。「ディーセントワーク」とは「働きがいのある人間らしい仕事」のことで、ILO(国際労働機関)が1999年6月から主目標としてか掲げている概念です。この「ディーセントワーク」を目指しILO中核的労働基準5分野が定められています。その一つが「安全で健康的な労働環境」です。「ビジネスと人権」を展開していくのに最重要なのはトップ(経営陣)によるコミットメント(約束)の表明です。