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家政婦 一審取り消し労災と認定 家事使用人該当せず 東京高裁(2025/1/6)

家政婦兼訪問介護ヘルパーとして7日間の住み込み勤務をした後に死亡した労働者の遺族が、労災支給を求めた裁判の控訴審で、東京高等裁判所(水野有子裁判長)は一審判決を取り消し、労災と認定する判決を下した。労働者は個人宅で家事業務と介護業務に従事していた。一審は介護業務の雇用主は家政婦紹介会社、家事業務は個人宅と指摘。家事業務の時間は労働基準法が適用除外となる家事使用人の勤務で、労働時間に当たらないとした。一方、同高裁は介護と家事は一体として紹介会社の業務だったと強調。家事使用人に該当せず、労災認定基準を満たすとした。

 裁判は家政婦紹介会社に家政婦兼訪問介護ヘルパーとして登録し、同社から紹介・あっせんを受けた個人宅などで働いていた労働者の遺族が起こした。労働者は平成27年5月20~27日の朝まで、要介護度5の女性の個人宅で住み込み勤務に従事した。勤務終了後の27日の夜に心肺停止状態で発見され、翌日死亡が確認されている。

 遺族は同社の業務に起因して死亡したとして、労災申請を行ったが、東京・渋谷労働基準監督署長は、家事使用人は労災保険法の適用が除外されるとして、労災不支給を決定した。労働基準法第116条2項は「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない」と規定している。「家事使用人」については、個人宅でなく企業が雇用している場合は該当しないとする行政解釈がある。

 一審の東京地方裁判所は労災不支給処分を適法と判断した。家事業務の雇用主は個人宅であり、労基法の適用除外となる家事使用人に当たると指摘。家事業務に従事した時間は労働時間に組み込まれないとした。介護業務の雇用主は同社だが、介護に従事した時間は1日4時間30分、週31時間30分で、業務起因性は認められないとしている。

 同高裁は介護・家事ともに一体として会社の業務だったとして、労災不支給処分を取り消した。両業務は場所的・時間的・質的にも区別は困難と指摘。同社との間で介護・家事の双方を業務内容とする雇用契約が締結されており、労基法が定める家事使用人には該当しないとした。家事業務についても同社が指示をしていた点や、雇用主ごとの賃金額を明確に区分せず、日給1万6000円に設定していた点も重視している。

 業務起因性については、過労死認定基準が定める「短時間の過重業務」に当たるとした。1日の労働時間は15時間に上るうえ、深夜時間帯にもおむつ交換の業務があり、連続した6時間以上の睡眠を取ることが不可能な状態にあったと強調。専用の部屋も与えられておらず、休憩は台所の椅子、睡眠も要介護者の部屋で取っており、疲労を回復させるのは困難だったとした。

 労働者の代理人を務めた明石順平弁護士は、家政婦紹介会社では、介護の雇用主は紹介会社、家事は個人宅としてサービスを提供するスキームが多いと指摘する。雇用主を形式的に分けたとしても、実態として業務を区別するのは不可能なため、事業の見直しが求められる、影響の大きい判決と評価した。

令和6年9月19日、東京高裁判決

(以上 労働新聞より)

東京高裁の判断は適切だと考えます。労働法規では実態に応じて判断することが大切です。高齢者が増加する日本では上記のような働き方は増えると思います。

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