期間3年で雇止めは有効 東京地裁(2025/2/13)
全国紙の100%子会社の出版社で働く労働者が雇止めを不服とした裁判で、東京地方裁判所(中野哲美裁判官)は労働者の請求をすべて棄却した。同社は正社員を採用する際、1年間の契約社員とし、更新を重ねつつ随時正社員登用する運用を採っていた。労働者は自己都合退職などを除くと、9割は正社員になっていると主張したが、同地裁は労働者が登用基準を採用前に問い合わせていた事実を重視。一定の要件を満たしたからといって、確実に登用されるわけでないことは当然認識できたとして、合理的期待があったとはいえないとした。同社は更新を2回・3年までとする上限規定を厳格に守っているとして、3年での雇止めを有効としている。
全国紙の100%子会社である同社は、親会社の出向社員が中核人材となっている。原則として正社員の新規採用をしておらず、正社員採用をする際はまず1年間の契約社員とし、随時正社員登用する取扱いとしていた。契約社員の更新上限については、2回または通算3年までとする上限規定を設けている。
労働者は令和元年10月15日に同社に契約社員として入社した。業務内容は出版営業、期間は同年10月16日~2年9月30日までで、2回の契約更新の後、4年9月30日に雇止めとなった。
同社の就業規則には、所属管理者の推薦があり、面接試験に合格した者を随時正社員に転換させることがあるという規定があった。労働者は正社員登用を希望しており、採用決定時には正社員登用の基準を問い合わせていた。これに対し、同社は具体的な数値目標はなく、期間満了の都度総合的に判断していると回答している。
同社は契約社員についても人事評価を行っており、20項目からなる業績評定書を策定していた。労働者の業績評定書も策定していたが、内容や評価結果を開示することはなかった。同社は4年8月2日、労働者と面談し、業績評定書の点数が足りないとして、労働契約の終了を告げた。労働者はどの項目の数値がどのように足りなかったのか、自身の点数は何点だったのかを質問したが、同社は結果を公開していないとして、回答しなかった。労働者は雇止めなどを不服として裁判を起こした。
同地裁は労働者の請求をすべて棄却した。同社に更新の上限規定を超えて契約更新された従業員はおらず、更新に関する合理的期待はないと評価している。人事評価結果をただちに開示しなかった同社の対応についても、不法行為に当たらないとした。
労働者は、平成28年~令和5年までの8年間に66人の契約社員が採用されているが、自己都合退職者を除く45人のうち、35人は正社員登用され、6人が業務委託へ転換しており、雇止めとなったのは自身を含めて4人しかいないと訴えた。同地裁は労働契約法第19条2項の「当該有期労働契約が更新される」期待は、正社員登用に関する期待とは異なると指摘。労働者は正社員登用の基準を採用前に問い合わせており、数値目標などが存在せず、一定の要件を満たせば確定的に正社員登用されるものでないことは当然認識できていたとして、正社員登用の合理的期待があったともいえないとした。
人事評価結果の開示については、労働者は積極的な開示を求めていなかったと指摘。その後の労働審判手続きで業績評定書を開示した経過を踏まえれば、ただちに開示に応じなかったとしても、不法行為に当たるような違法性があるとはいえないとした。
(以上 労働新聞より)
≪ 雇用企業が2万社増 労働者数は230万人に 厚労省・外国人活用で集計 | スポットワーク 事故防止の説明「なかった」65% 連合・調査 ≫