「人権デューデリジェンスは“完璧”じゃなくていい。小さく、誠実に始める方法」(2025/5/12)
「論語とそろばん」から学ぶ経営のあり方
私は時折、渋沢栄一の『論語とそろばん』に立ち返ることがあります。
利益を追うことと、道徳を守ること。この二つは矛盾しない。
むしろ、誠実に続けることこそが信頼となり、長く事業を続ける力になる——。
これは、企業の「人権デューデリジェンス(以下、人権DD)」にも通じる考え方と思います。
「人権DD」は大企業だけの話?
最近では、大企業やグローバル企業を中心に「人権DD」が求められるようになってきました。
でも実際には、中小企業でも、特に外国人や社会的に弱い立場の方を雇用している企業ほど、
「人権」にまつわるリスクと、すぐ隣り合わせで日々を過ごしているのではないでしょうか?
「でもうちは小さい会社だし、専門知識もないし…」と、最初の一歩をためらってしまう。
そんなときこそ思い出したいのが、渋沢栄一の言葉です。
完璧じゃなくていい。「小さく」「誠実に」始めればいい
人権DDも、ゼロから完璧を目指す必要はありません。
むしろ「小さく始めて、誠実に続ける」ことこそ、信頼につながります。
以下は、私が中小企業の現場でご提案している“3つのステップ”です。
① まずは「見える化」から
社員に簡単なヒアリングをしてみる。
「困っていることはないですか?」
「誰かに相談しづらいと感じることはありますか?」
こうした問いを通じて、人権リスクは“発見”されていきます。
はじめは気づくことが第一歩です。
② 小さな取組でも「言語化・記録化」しておく
「何もしてない」ではなく、「今ここまでやってます」と伝えることが、誠実な姿勢です。
外国人スタッフへのルール説明を口頭で行った。
アンケートを配布した。
就業規則を分かりやすく説明した。
たったこれだけの記録でも、「私たちは気にかけている」というメッセージになります。
③ 継続するために「巻き込む」「共有する」
社員からアイデアをもらう。
1~3ケ月に1回、気になることを共有する場をつくる。
外部の専門家(社労士やNPO)に相談してみる。
「一緒に考える」ことが、DDを“形式”ではなく“文化”にしていきます。
最後に
人権DDに「100点満点の模範解答」はありません。
だからこそ、他社と比べる必要はないのです。
「できることから、できるだけ」
「沈黙より、小さな声を」
「責任回避より、責任の分かち合いを」
そんな経営を、貴社のサイズで、貴社らしく始めてみませんか?
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