【フリーランス問題は“人権”問題】国連が指摘、日本企業の課題とは?〜BHR推進社労士の視点から〜(2025/6/3)
はじめに:フリーランスの働き方に“人権”はあるのか?
2024年夏、国連ビジネスと人権作業部会(UNWG)が日本を訪問し、企業活動による人権侵害の実態を報告しました。その中で特に深刻とされたのが、労働分野における人権侵害です。とりわけ、**フリーランス(個人事業主)**に関する問題が顕著だとされています。
国連が指摘した「フリーランスの人権リスク」
フリーランスを取り巻く問題は、単なる法律や契約の不備にとどまりません。次のような状況が、人権の観点から重大な懸念事項とされています。
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📉 一方的な低報酬・報酬未払い
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❌ 労災や社会保険の適用なし
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🛑 契約解除=実質的な“解雇”なのに救済手段がない
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🤐 団体交渉や団結権の行使が困難
「個人事業主だから自己責任」と片づけられがちなこれらの課題は、働く人としての尊厳の問題に直結します。
公正取引委員会も動いた――「フリーランス法」の運用状況(2024年)
2024年度(令和6年度)の公正取引委員会の報告によると、次のような実態が明らかになっています。
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🔍 新たな法違反の疑い:137件
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🏢 指導を受けた企業:54社
主な違反事例
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運送業者が、取引開始後に条件を明示
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ソフトウェア会社が、報酬の受領期日・場所を契約で明確化していなかった
これらはすべて、「取引条件の明示義務」に違反するものです。
フリーランス問題は「ビジネスと人権」課題そのもの
近年、企業の人権尊重責任(HRDD:人権デューデリジェンス)が世界的に求められています。日本企業も例外ではありません。
しかし、サプライチェーンの中で働くフリーランスやギグワーカーの状況にまで目を向けている企業は、まだごく一部です。
BHR推進社労士としてできること
✅ 1. フリーランス問題を「人権課題」として認識させる
単なる労務リスクではなく、「人としての尊厳」にかかわる問題であることを企業に伝える。
✅ 2. 契約・取引慣行の見直し支援
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報酬の透明性
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契約書の整備と丁寧な説明
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契約解除時のガイドライン
✅ 3. 人権方針・DD体制にフリーランスも含める
「雇用していないから関係ない」は通用しない時代に。
今後の動向と社労士の役割
今後の注目点は以下のとおりです。
⚖️ 独禁法・下請法の厳格運用と行政指導の強化
📚 法律の見直し:労働者性の再定義、労災・社保の適用拡大
🤝 フリーランス団体の交渉力強化と法的地位の整備
BHR推進社労士には、「企業の伴走者」として、そして「弱い立場の働き手の代弁者」としての二重の使命が求められています。
まとめ:フリーランス保護は、人権保障の第一歩
制度は整いつつありますが、実態が追いついていないのが現状です。
フリーランス問題を「法令遵守」や「リスク回避」の話で終わらせず、人権の問題として捉えること。
それが、私たち社労士の役割であり、BHRの本質でもあります。
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