ハラスメント対策と人権尊重の関係|多様な働き方時代に企業が守るべきこととは(2025/6/7)
職場のハラスメント対策は「制度整備」で終わるものではありません。特にテレワークやフレックス勤務など、多様な働き方が当たり前になった今、企業が本当に取り組むべきは、従業員の人権を守ることです。
この記事では、精神科医・西上貴志先生(ビジネスガイド2023年11月号)の指摘をもとに、人権尊重とハラスメント防止の関係性を、BHR(ビジネスと人権)推進社労士の視点から解説します。
多様な働き方が進む現代の職場で起きている変化
テレワークやフレックス制度が進む中で、職場内のコミュニケーションは大きく変化しています。直接顔を合わせる機会が減り、非言語的なやり取りが難しくなったことで、ちょっとした発言や態度が「ハラスメント」と捉えられてしまうケースが増えています。
このような状況下では、「相手の立場に立って考える」視点がますます重要になります。精神科医の西上医師も、「多様な働き方=多様な価値観」とした上で、他者目線を持つことの重要性を強調しています。
「相手の立場で考えること」は人権尊重の原点
私はBHR推進社労士として、「相手の立場で考える」ことは、人権尊重の第一歩であり、すべてだと考えています。これは抽象的な理想論ではありません。働く人が互いに尊重し合うためには、精神的な“余裕”が必要なのです。
企業が従業員に「思いやりを持て」と求める前に、自社の職場環境を見直してほしい。
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長時間労働が常態化していないか
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経済的に不安定な非正規雇用に依存していないか
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心の健康を保てる支援体制があるか
従業員に「相手の立場を想像できるだけの余裕」がなければ、ハラスメントの芽はつねに潜んでしまいます。
ハラスメント防止と人権尊重は同じ根から生まれる
「ハラスメント対策」と「人権尊重」は、別々の取り組みに見えるかもしれませんが、実はどちらも“人を大切にする文化”の土壌から生まれます。
法令遵守だけでは、ハラスメントは防げません。形式だけの研修や就業規則も、人の心を動かしません。
本当に必要なのは、「この職場で働いてよかった」と思える環境をつくること――それが、BHR(ビジネスと人権)の考え方です。
まとめ|企業が取り組むべきは“余裕”のある職場づくり
「相手の立場に立つ」という行動は、簡単そうに見えて、実は高度な精神的作業です。そして、それができる人を育てるには、企業が“人としての余裕”を守る職場環境を提供することが前提です。
BHR推進社労士として、私は今後も、すべての働く人が尊重され、安心して自分らしく働ける環境づくりを支援していきます。
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