【職場での自殺対策】全ての企業の人事・管理職・経営者に知ってほしい重要なポイント(2025/6/13)
~ビジネスと人権推進社労士の立場から~
職場における自殺予防は、すべての企業にとって極めて重要な課題です。2024年1月号のビジネスガイドに掲載された精神科産業医・西上貴志先生の記事から、職場の人事担当者・管理職・経営者が知っておくべき視点をまとめました。
🌱 日本の自殺の現状と背景
日本では2006年に自殺対策基本法が施行され、自殺者数は一時減少しました。しかし、コロナ禍を契機に再び増加傾向が見られ、依然として先進国の中で自殺率は高い水準にあります。自殺の背景には精神的な問題だけでなく、経済的困窮、職場や家庭のトラブル、男女関係の問題など、多くの社会的要因が絡んでいます。単に「自殺の瞬間」だけを見るのではなく、その人がどのような経過をたどって追い詰められたのかを理解する姿勢が必要です。
🌱 職場で気づくことができるサイン
自殺は突然起こるものではなく、必ずといってよいほど前兆やサインが見られます。例えば:
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抑うつ的な様子や体調不良
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大きな仕事の失敗
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家庭や職場で孤立感を抱えている
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飲酒量の急増 など
在宅勤務が広がり直接的な接触機会は減っていても、日々のコミュニケーションの中で「普段と様子が違う」と感じたら、その直感を大切にしましょう。
🌱 TALKの原則で対応する
自殺予防の現場で推奨されるのがTALKの原則です。
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T(Tell) 誠実に、丁寧に声をかける
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A(Ask) 自殺のことを曖昧にせず、はっきり尋ねる
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L(Listen) 最後まで相手の話をしっかり聴く
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K(Keep safe) 命の安全を最優先にする
「死にたいと思っていないか」を尋ねるのは逆にストレスを与えるのでは…とためらう方もいますが、実際は話題にすることで救いの糸口になることが多いのです。
🌱 管理職・人事が持つべき姿勢
管理職や人事担当者に求められるのは、変化に気づき、耳を傾け、勇気をもって声をかける姿勢です。アドバイスを急ぐより、まずは相手の話をじっくり聴くことが心理的負担の軽減につながります。
🌱 BHR推進社労士としてのメッセージ
人命の尊重はビジネスと人権の基本です。自殺予防は単なる安全配慮義務の一環ではなく、企業の人権責任の重要な一部です。全ての職場で、この知識と意識を共有し、実践していくことが求められています。
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