【BHR推進社労士の視点】正社員以外の能力開発機会、見直しの時では? 〜ディーセント・ワークと企業のこれから〜(2025/6/17)
正社員と非正社員の研修機会に見える課題
政府が令和6年度「ものづくり基盤技術の振興施策(ものづくり白書)」を発表し、製造業における能力開発の現状が改めて示されました。それによると、正社員の方へのOff-JT(職場外研修)の実施割合は、コロナ禍の落ち込みから持ち直し、令和5年度は76.4%とコロナ前の水準を上回っています。
一方で、正社員以外の方への研修実施率は24.0%にとどまり、コロナ前(30.5%)からも低いままです。この数字からは、雇用形態による研修機会の差が広がっている様子がうかがえます。
ディーセント・ワークの理念から見た「研修格差」
ILO(国際労働機関)が提唱するディーセント・ワークは、雇用形態にかかわらず、すべての働く人が公正に能力開発や社会的保護を受けられることを大切にしています。研修機会の不均衡は、知らず知らずのうちにキャリア形成の機会や処遇改善の道を閉ざしてしまうことがあります。
雇用形態だけを理由に能力開発の機会に差が生じることは、合理的な理由がない限り、ディーセント・ワークの趣旨にそぐわないと考えられます。そして、それは人権の視点からも見直しが求められるテーマです。
能力開発への投資は企業の未来への投資
研修機会は、働く方にとってはキャリアアップの手段であり、企業にとっては人材力・競争力を高める重要な投資です。雇用形態にかかわらず、幅広い方々の力を引き出していくことは、これからの企業経営においてますます大切になるでしょう。
特に、AI技術の進展などで必要なスキルが変わりつつある今、すべての従業員の学び直しやスキルアップが欠かせません。研修機会を広く提供することは、企業の未来を支える土台となるはずです。
BHR推進社労士からのメッセージ
私はBHR(ビジネスと人権)推進の立場から、企業の皆さまに次のことをお勧めします。
👉 雇用形態にとらわれず、全員が成長できる研修機会の確保
👉 研修方針の見直しと、より実効性のある能力開発計画の策定
👉 AI時代に向けたスキル強化の積極的な支援
人権を大切にする取り組みは、結果として企業の信頼や持続可能性を高めるものです。研修や能力開発の機会について、ぜひ改めて見直してみてはいかがでしょうか。
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