【ビジネスと人権】育成就労制度の目的と背景を読み解く ――監理団体が知っておきたい「人権尊重」の本質とは? 外国人労働者と人権・第2回(2025/6/25)
🌿リード文
育成就労制度は、ただの人手不足対策ではありません。
「なぜ今、制度を見直す必要があったのか?」
その背景と目的を知ることは、監理団体や受入企業が制度を正しく理解し、実務に活かす第一歩です。
なぜ育成就労制度が必要になったのか?
技能実習制度の課題は多くの場面で顕在化してきました。
- 経済的拘束と転職禁止
- 監理団体の監督機能の形骸化
- 労働環境の過酷さや人権侵害
これらは国内だけでなく、国際的にも深刻な問題として指摘され、
ILOや国連の基準からも日本の制度は改善を求められていました。
育成就労制度が目指す3つのキーワード
- 人材育成
外国人を単なる労働力としてではなく、
中長期的に育て、技能を高める「戦力」として位置づけます。 - 柔軟な労働移動
嫌な環境やトラブルがあった場合に、
本人が働く先を変えられる制度的保障を設けます。 - 人権尊重の義務化
監理支援機関や受入企業に、
労働者の人権配慮を義務づけ、適正な運用を求めます。
現行の外国人技能実習機構も厳しいチェックを実施
現行の外国人技能実習制度下でも、外国人技能実習機構は全国の実習実施者に対し厳格な監査を行っています。
例えば、愛媛県のある造船所で、約2000人もの実習計画が取り消された事例があります。
その理由は、クレーンの安全点検を怠っていたことにありますが、実際には外国人技能実習生はクレーン業務に従事していませんでした。
では、なぜここまで厳しい処分が下されたのでしょうか?
厳しい処分の背景と国際的動向
私の推測ですが、2022年にILOの労働基準に「安全で健康な労働条件」という新しい分野が追加され、各加盟国が対応を始めています。
単なる労働安全衛生法違反という枠を超え、
より厳格な対応をすることで、日本の制度対応を国際社会にアピールし、信頼を高める狙いがあると考えられます。
監理団体(監理支援機関)に求められる変化
- 労働者の声を拾い、問題を早期発見・是正する
- 受入企業への指導と支援の質を高める
- 透明性のある運用と外部監査の連携を強化する
「書類チェック」や「現場巡回」だけでは不十分。
人権に寄り添う新しいマネジメントが不可欠です。
BHR推進社労士からの一言
「なぜ変わったのか?」の問いに正面から向き合うことは、
監理団体としての責任であり、信頼されるための道です。
✍️この記事を書いた人
烏脇 直俊(からすわき なおとし)
BHR(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)
外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。
「制度を“使う”だけでなく、“活かす”時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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次回予告
次回は、
「なぜ今“人権”が問われるのか?――国際ルールと日本の制度改革の背景」
について詳しく解説します。
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