【ビジネスと人権】育成就労制度で求められる“実務対応”とは? ――監理支援機関・企業が今すぐ見直すべき3つの視点 外国人労働者と人権・第4回(2025/6/27)
「制度は知っている。でも、何から手を付けるべきか分からない」
そんな声をよく耳にします。
育成就労制度は、単なる制度変更ではなく、**実務対応の“質”**が問われる改革です。
この章では、監理支援機関や受入企業が今すぐ見直すべき3つのポイントを紹介します。
① 人権方針と社内体制の整備
育成就労制度では、「人権尊重」を基本とした就労環境の構築が求められます。
まずは**企業・団体としての「人権方針」**を明文化しましょう。
あわせて以下の体制づくりがカギになります:
- 苦情・相談対応窓口の設置
- 外国人本人に伝わる言語での運用
- 通報があったときのエスカレーション手順
② 受入れ前からの支援強化
日本語研修だけでなく、文化や生活ルール、労働安全衛生などの事前説明は、
トラブル予防の要です。
監理支援機関としては:
- 育成計画や雇用契約の内容を分かりやすく説明
- 生活相談やメンタルケアの体制づくり
- 外国人が孤立しない「仲間づくり」の支援
特に重要なのが住居環境の整備です。
たとえば、ワンルームに2〜3人を詰め込むような環境ではプライバシーが保たれず、
生活の質が下がり、心身の健康を損なう恐れがあります。
そのような環境では、どれだけ制度対応を整えても人材は定着しません。
さらに、地域とのつながりを支援したり、安心して暮らせる生活基盤を整えることは、受入れ企業の当然の責任です。
ほんの少し、育成就労外国人の気持ちや立場に立てば、何をすべきかは見えてくるはずです。
ほんの少しの“想いやり”です。それさえできない企業は、もはや存続する意味を問われる時代に来ています。
③ 労務管理の透明化と記録保持
勤務時間、賃金支払い、休日管理などの労務情報を可視化し、説明できる状態にしておくことが重要です。
たとえば:
- 労働条件通知書は本人の母国語で作成
- 勤怠はデジタルで記録・保管
- 賃金控除や住居費などの項目も明確に説明
制度対応において「説明責任」は今後ますます厳しく求められます。
BHR推進社労士からのひとこと
制度対応とは、単なる“様式の整備”ではありません。
それは「働く人のために本気で整える環境づくり」です。
監理団体・企業の取組みの真価は、現場の信頼と定着率の向上という形で現れてきます。
✍️この記事を書いた人
烏脇 直俊(からすわき なおとし)
BHR(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)
外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。
「制度を“使う”だけでなく、“活かす”時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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次回予告
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「制度対応における“内部監査”と“外部監査”の違いとは?」
監理団体が注目すべき「信頼構築の鍵」を解説します。
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