【ビジネスと人権】内部監査と外部監査の違いとは? ――信頼される監理団体・企業になるために 外国人労働者と人権・第5回(2025/6/28)
育成就労制度の運用では、**「監査」**という言葉が、単なるチェックを超えて
制度運営の“信頼性の核心”となっています。
今回は、「内部監査」と「外部監査」の違い、そして育成就労制度における新たな監査体制についてお伝えします。
内部監査とは?
――“自己点検”の視点
内部監査とは、自らの組織の中で行う定期的な点検活動です。
たとえば、監理団体自身が、育成計画や労働条件、住居環境、相談対応体制などを確認・改善するプロセスが該当します。
**目的は、「早期発見」と「自主的な改善」**です。
内部監査を機能させるには:
- 担当部署に任せきりにせず、第三者的な立場で評価できる人材を関与させる
- 点検結果を可視化し、組織内で共有・改善へとつなげる
- 「形式チェック」だけでなく、「実態の検証」に踏み込む姿勢を持つ
育成就労制度では、外部監査が義務に
これまでの外国人技能実習制度では、内部監査か外部監査の選択制となっており、
実際には全体の約3分の1程度が外部監査を採用していました。
しかし、育成就労制度では大きな転換が図られています。
外部監査人の設置が、制度上の「許可要件」として義務づけられたのです。
政府が外部監査人を義務化した背景には、以下のような深刻な課題がありました。
❗なぜ外部監査“1本化”が求められたのか?
技能実習制度では、監理団体と実習生の受入れ企業が事実上同一であるケースも多く、内部監査が“有名無実”となっていた実態がありました。
本来、実習生を守るべき制度が、運用の中で形骸化し、機能不全に陥っていたのです。
これは辛辣な表現ではありますが、事実として「保護制度が機能していなかった」ことが、今回の法改正の背景にあります。
その反省の上に立ち、育成就労制度では外部の専門家(弁護士・社会保険労務士・行政書士など)による監査を制度の土台に据えました。
令和9年、育成就労制度が本格施行されるなかで、もし再び形を変えて“同じような問題”が起これば、
政府はさらに厳しい対応をとる可能性が高いと考えられます。
この制度は試されているのです。
人権に配慮できない企業は、自ら撤退すべきだ――それが制度の本質に対する真摯な向き合い方です。
監査は義務であると同時に、経営戦略でもある
義務だから、ではなく
「外部の目をどう活かすか」こそが問われる時代です。
- 自浄力を支える内部監査
- 信頼性と透明性を支える外部監査
この両者を有機的に運用することで、
育成就労外国人に選ばれ、社会に信頼される組織を築くことが可能になります。
BHR推進社労士からのひとこと
監査とは“チェックのための作業”ではありません。
制度に命を吹き込み、現場に信頼と希望を生む「実務の力」です。
その仕組みの中に、私たち専門職が関与できることを強く誇りに思います。
私たちは、制度を「形だけ」にしないための存在でもあるのです。
✍️この記事を書いた人
烏脇 直俊(からすわき なおとし)
BHR(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)
外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。
「制度を“使う”だけでなく、“活かす”時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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次回予告
第6回では、
「“監理支援機関”とは何か?監理団体との違いは?」をわかりやすく解説します。
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