【ビジネスと人権】「監理支援機関」とは何か? ――旧・監理団体との違いと求められる新たな役割 外国人労働者と人権・第6回(2025/6/29)
リード文
育成就労制度の導入とともに、制度の中核を担う新しい存在が登場します。
それが「監理支援機関」です。
「監理団体とどう違うの?」「許可制になるって本当?」――そんな疑問に、BHR推進社労士としてお答えします。
監理団体とは何だったのか?
外国人技能実習制度では、実習生の監理やサポートを担う存在として「監理団体」が設置されてきました。
主に、技能実習生が適切に働けるように以下の役割を果たしてきました:
- 実習計画の認定支援
- 実習実施者(企業)への巡回・指導
- 日本語・生活指導の実施
- 苦情相談の受付 など
しかし実際には、
企業と監理団体が一体となっていたり、形だけの支援に終わっていたケースも少なくなかったのが実情です。
育成就労制度では「監理支援機関」へと再編
育成就労制度の施行に伴い、従来の監理団体は廃止されるわけではありませんが、
新たに「監理支援機関」として再編・許可制の下で制度運用を行うことが求められます。
重要なポイントは、しばらくの間は技能実習制度と育成就労制度が併存するということです。
すでに技能実習生として入国している外国人が在留する限り、旧制度の「監理団体」と新制度の「監理支援機関」が併存する期間が続きます。
したがって、これは単なる名称変更ではなく、制度的な性格や責任の変化を伴う“段階的な転換”だと言えます。
✔ 監理支援機関の新しい役割
従来(監理団体) | 新制度(監理支援機関) |
技能実習計画の確認 | 育成計画の適正性を確認 |
形式的な訪問支援 | 実効性ある巡回・助言・記録 |
苦情相談は任意対応も多かった | 苦情対応・救済体制の整備は義務 |
外部監査は任意(内部監査と選択) | 外部監査人の設置が許可要件に |
新制度では、「支援の実態」が厳しく問われるようになります。
❗ “支援するフリ”では通用しない時代へ
旧制度では、支援の質にバラつきがあり、実質的に放置されていたケースもありました。
新制度では、そうした運用の“抜け道”は通用しなくなります。
さらに、監理支援機関としての体制・専門性・人権感覚が整っていなければ、許可そのものが得られません。
✔ 制度の根幹を支える立場として
監理支援機関は、単に制度の「中継役」ではありません。
外国人と企業をつなぎ、現場の人権を守るキープレイヤーです。
- 支援記録は詳細に保管・提出義務あり
- 苦情相談には迅速かつ中立に対応
- 地域・行政・専門家との連携も求められる
監理支援機関は、もはや“運用のための補助機関”ではなく、
制度を成功させるための“中心的担い手”となります。
BHR推進社労士からのひとこと
制度は変わりました。
しかし、実際に「変える」のは、支援に携わる人と組織の意識です。
監理支援機関がその役割をまっとうできるかどうかで、
育成就労制度の未来は大きく左右されます。
✍️この記事を書いた人
烏脇 直俊(からすわき なおとし)
BHR(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)
外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。
「制度を“使う”だけでなく、“活かす”時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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