【ビジネスと人権】日本語教育は“人権支援”の基礎インフラ ――言葉の壁を越えてこそ、人権が届く 外国人労働者と人権・ 第10回(2025/7/4)
🌿
「わからない」「伝わらない」――これは労働トラブルや孤立の温床です。
育成就労制度では、日本語教育が制度的に位置づけられ、段階的に学習を支援する仕組みが導入される見込みです。
本記事では、日本語教育とあわせて注目すべきデジタル支援ツールの活用についても紹介し、BHR推進社労士の視点から解説します。
📘制度における日本語教育の位置づけ
育成就労制度では、日本語教育は就労前・就労中の両方で必須項目となる方向です。
- 就労前:日本語A1相当 or 100時間以上の学習
- 就労中:A2相当を目指す追加学習(100時間以上)
- 方法:対面、eラーニング、委託型等の併用可
出典:育成就労に関する論点
❗「言葉が通じない」=“制度からの排除”
日本語が理解できないと、以下のような不利益が生じます:
- 就業規則や契約内容の誤解
- 苦情相談や体調不良の訴えが困難
- 職場の安全ルールの理解不足
- 地域との接点が築けない
これらはすべて「構造的孤立」=人権へのアクセス障壁です。
🧠補完策としての翻訳ツール:株式会社カミナシの事例
現場では、翻訳機能付きの業務支援アプリの活用が急速に進んでいます。
その代表例が、株式会社カミナシ(本社:東京)が提供する多言語対応ツールです。
✔ 活用イメージ
- 日本語で作成された業務指示を、
→ 各従業員のスマートフォンに各人の母国語に自動翻訳して表示 - 口頭説明では伝えきれない安全指示・手順書・点検項目などにも対応
- 現場の混乱や危険を回避しつつ、言葉の壁を補完
📱 実際の職場では「ミスが減った」「ストレスが減った」「教育効率が上がった」「コミュニケーションが活発になった」など、非常に高い効果が報告されています。
🧭BHR視点:「言葉」は“人権への鍵”
国連ビジネスと人権指導原則は、労働者が自らの権利に“実際に”アクセスできることを重視しています。
つまり:
- 日本語教育だけでは時間がかかる
- 現場で即効性があるツールを併用することが最も効果的
こうした技術の活用は、「翻訳機=人権インフラ」の一環とも言えるのです。
💬孤立防止=制度定着のカギ
言葉が通じず孤立した外国人は、職場への不信感や早期退職に繋がりやすくなります。
日本語教育と翻訳ツールの両輪で支援することで、信頼関係と職場定着を同時に促進できます。
BHR推進社労士からのひとこと
「言葉がわからないまま働かせる」のは、“労働者”としての前提を奪うことです。
教育と技術の両面から支援することで、外国人も企業も安心して未来を築けます。
人権にアクセスできる環境づくり――それが私たちの責任です。
✍️この記事を書いた人
烏脇直俊(からすわきなおとし)
BHR(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)
外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。
「制度を“使う”だけでなく、“活かす”時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
📩 無料相談・お問い合わせフォームはこちら
次回予告
第11回:職場の安全衛生と健康管理
安全で健康な労働条件は「最低限」ではなく「国際基準」です。
≪ 【ビジネスと人権】安全で健康な労働条件は「最低限」ではなく「国際基準」 ――事故のない職場に、人権の根幹がある 外国人労働者と人権・第11回 | 【ビジネスと人権】苦情相談制度と第三者救済 ――相談が“安心”につながる社会的責任へ 外国人労働者と人権・第9回 ≫