【ビジネスと人権】「3年で終わらせない」制度運用へ ――定着支援とキャリア支援は企業の責任 外国人労働者と人権・第13回(2025/7/7)
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育成就労制度は、従来の「短期・単純労働」の枠を越えて、
外国人が“職業人”としてキャリアを築く道筋を示す制度へと進化しつつあります。
この制度を「人権的」に、そして「持続可能なもの」とするには、
企業がどこまで本気で定着支援とキャリア支援に取り組むかが問われます。
🔍制度の変化:育成型からキャリア型へ
従来の技能実習制度では、
- 「母国への技能移転」が建前
- 実際には3年で帰国・使い捨て
という矛盾がありました。
育成就労制度はこれを転換し、
特定技能への円滑な移行を前提に設計されています。
つまり:
「一時的な労働力」ではなく、「中長期的な職場の一員」へ。
📘制度上の位置づけ:段階的キャリア支援
育成就労制度では、以下のようなステップが想定されています:
ステージ | 支援内容(概要) |
育成就労(入国~3年) | 技能習得・日本語学習・生活支援 |
特定技能への移行 | 日本語A2以上、技能評価試験合格など |
特定技能継続 | 長期就労・職場内キャリア形成 |
この構造は、就労者本人の成長とキャリア構築を見据えた仕組みであることを意味します。
✅他社事例:ベネッセスタイルケアの取り組み
定着支援の成功事例として、株式会社ベネッセスタイルケアがありますnote.com+1gai-rou.com+1pref.ishikawa.lg.jp+5nihongocafe.jp+5global-saponet.mgl.mynavi.jp+5。
- 自社内で外国人材向け育成研修を実施
- 定期的な面談を通じて不安や不満を早期に把握
- 在留資格に関するサポートまで実施
このように、「個」に寄り添う定着支援が長期就労につながっている点が注目されています。
❗受け入れ企業が“やっておくべきこと”
「試用期間」的な受け入れで終わらせては、制度の意味がありません。
実効性ある取り組み例:
- 職場での継続雇用を見据えた職種設計
- 日本語・技能教育と職場業務を統合
- 定期的なキャリア面談(通訳付き)
- 特定技能移行への試験対策支援
🧭BHRの視点:「育てるだけでなく、共に歩む関係へ」企業の覚悟
BHR(ビジネスと人権)では、
「来た人を育てる」だけでなく、「その後の歩みを支える」責任が求められます。
着実なキャリア支援を行うことで、
- 自律性が尊重され
- 評価が公平に機能し
- 相互信頼が築かれる
これらは、持続可能な制度運用の前提条件です。
BHR推進社労士からのひとこと
人は、「ここにいてもいい」と思える場所でしか育ちません。
だからこそ、企業がキャリア支援に本気で取り組むことが重要です。制度は単なる仕組みではなく、“人の未来”を形づくる力を持っています。
私たち社会保険労務士は、その実現に向けて伴走支援を行う専門職です。
この姿勢は、何も外国人労働者に限ったものではありません。育成就労制度を通じて職場全体を見直すことで、日本人スタッフにとっても働きやすい環境が生まれます。
それこそが、BHR(ビジネスと人権)の推進であり、企業の本質的な価値向上につながる道だと考えています
✍️この記事を書いた人
烏脇 直俊(からすわき なおとし)
BHR(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)
外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。
「制度を“使う”だけでなく、“活かす”時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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