【ビジネスと人権】地域が受け入れ、企業が根づかせる ――育成就労制度における「共生」と「協働」の再設計 外国人労働者と人権・第19回(2025/7/13)
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「働く場を提供すればそれで十分」
そう考えていませんか?
育成就労制度は、単に“働きに来た人”を受け入れるのではなく、
「地域で暮らし、成長していく人」を支える制度です。
今回は、企業と地域それぞれが果たすべき「受入れの質」について、
BHR(ビジネスと人権)の観点から掘り下げます。
🏢企業に求められる役割:「根づかせる責任」
育成就労制度の根幹は「人材育成」にあります。
しかし、どれだけ良い制度でも、企業が“働く場”しか提供しないなら、育成は成立しません。
✅ 企業が果たすべき「根づかせる」支援:
項目 | 具体例 |
住居の確保 | プライバシーに配慮された部屋/通勤手段の確保 |
生活支援 | 銀行口座開設・病院案内・ごみ出しルール等の生活教育 |
職場の相談体制 | ハラスメント・不安の早期察知と対応 |
キャリア支援 | 育成計画に沿ったスキルアップ、通訳支援、評価制度の整備 |
💬ほんの少し、立場を入れ替えて考えてみてください。
言葉も文化も分からない国で、孤独に過ごす不安を。
企業のほんの少しの思いやりが、育成就労の“成功と定着”を左右します。
🏘 地域に期待される役割:「共生を支える存在」へ
育成就労制度は、企業だけでなく地域社会の協力によって成り立ちます。
外国人が「暮らす」のは地域です。だからこそ、地域には多文化共生社会の一員としての役割が求められます。
✅ 地域が担う「共生の支援」:
項目 | 地域の役割 |
情報提供 | 多言語による市役所案内、防災情報、イベント案内などを通して、生活と文化の理解を促進 |
相談支援 | 自治体とハローワーク等との連携体制を通じ、生活・就業全般のサポート窓口を整備 |
地域交流 | 「自治体主催の交流会への案内や同行支援」など、自治体やNPOによる交流促進機能が制度の中にも位置づけられています |
これらの取組みは、特定技能制度の運用や地方自治体の多文化共生施策にも引き継がれており、
育成就労制度でも同様の地域連携が不可欠です。
🧭企業・地域・行政が連携して初めて、「制度」が機能する
制度を設計するのは国。
その制度の実効性を高めていくには、企業・地域・行政が連携しながら支えていくことがカギとなります。
- 企業が「定着」を支援し、
- 地域が「共生」を支え、
- 行政が「制度と支援の接点」を設計し、
- そして外国人本人が「自立」を果たす
このような協働の循環が、「持続可能な受入れ」の土台となります。
💬「雇う」ことはスタート、制度の本質は“共に支える”こと
育成就労制度は、外国人を「雇う」ことを前提としつつ、
「育てること」「暮らしを支えること」「職場で共に働くこと」が一体となった制度です。
そのことを理解しているかどうかが、企業や地域の姿勢を問うリトマス試験紙となります。
BHR推進社労士からのひとこと
育成就労制度は、
「働かせる制度」ではなく、「共に成長する制度」です。
制度を活かす鍵は、現場にあります。
私は、企業と地域の“共生設計”の支援者として、この制度に伴走していきたいと考えています。
✍️この記事を書いた人
烏脇 直俊(からすわき なおとし)
BHR(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)
外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。
「制度を“使う”だけでなく、“活かす”時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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