【ビジネスと人権】評価とフィードバックの透明性 ――「がんばり」は誰が、どう見る? 公正な評価制度の重要性 外国人労働者と人権 第24回(2025/7/18)
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「頑張っているのに、評価されていない気がする」
「どうしたら昇給・昇格できるのかが分からない」――。
こうした不満や不安は、外国人労働者に限らず誰もが抱え得るものですが、
言葉や文化、制度にギャップがある外国人にとっては、より深刻な問題です。
今回は、育成就労制度における「公正な評価制度」の重要性と、
その運用に必要な視点、そして“BHR(ビジネスと人権)”との接点について解説します。
🎯 なぜ「評価の透明性」が必要か?
評価とは、単なる査定ではなく「組織からのメッセージ」です。
評価が曖昧だったり、不公平に見えたりすると、以下のような悪影響が起こります。
状況 |
起きやすい問題 |
評価基準が不明確 |
モチベーションの低下、不信感、早期離職 |
日本人だけが昇給・昇格している印象 |
差別感情の助長、人権リスク |
評価とフィードバックの不一致 |
パフォーマンス改善の機会喪失 |
育成就労制度は「人材育成」が目的です。
ならば当然、その成果をどう測るか=評価のあり方は制度の根幹です。
🧭 評価制度に必要な3つの柱
① 「見える」評価項目
- 能力や成果だけでなく、「態度」「協調性」「成長努力」も含めた多面的評価が必要
- 曖昧な表現ではなく、具体的な行動・結果に基づく記述が望ましい
② 「伝える」フィードバック
- 半期ごと、四半期ごとの面談を制度化
- 外国人に伝わる言語・形式で実施(通訳・翻訳も活用)
- 一方的ではなく、自己評価や相互対話も取り入れる
③ 「活かす」育成計画との連動
- 評価結果をもとに次期育成計画を見直す仕組みを整備
- キャリアパスや昇給制度との接続があってこそ、評価が生きる
🔎 誰が評価するのか?
その「権限」と「責任」
- 主な評価者は現場の上司や指導員が想定されます。
- しかし、属人的な判断だけではなく、監理支援機関が補完的にチェックすることで透明性を担保できます。
- 評価に対して不服がある場合の苦情対応ルートも明記しておくことが重要です。
💬 BHR視点から見た「評価制度の意義」
BHR(ビジネスと人権)の観点からは、「公正な処遇」としての評価の透明性が求められます。
特に外国人材に対しては、曖昧な評価や不透明な処遇が人権リスクとされるケースもあり、
“誤解されない”評価の仕組みが重要です。
評価は単なる業績判断ではなく、
「企業がその人の存在と努力をどのように受け止めているか」を伝える重要な手段であり、
そのあり方が、職場の信頼関係と定着率に直結します。
🛠 取り入れたい工夫の例
工夫 |
内容 |
評価シートの翻訳 |
母語またはやさしい日本語での併記 |
定期面談のマニュアル化 |
フィードバックの項目や順序を標準化 |
第三者チェック |
監理支援機関や社労士のダブルチェック |
評価会議の実施 |
指導員間で評価の基準をすり合わせる |
✍️BHR推進社労士からのひとこと
評価の不透明さは、組織にとって最大の人権リスクです。
外国人材が自らの努力と成長を実感し、将来に希望を持てる評価制度がなければ、
せっかくの育成就労制度も“名ばかり制度”に終わってしまうでしょう。
「どうすれば伝わるか?」
「どうすれば納得されるか?」
この問いに向き合うことが、BHRにおける“責任ある制度運用”の第一歩です。
✍️この記事を書いた人
烏脇 直俊(からすわき なおとし)
BHR(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)
外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。
「制度を“使う”だけでなく、“活かす”時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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