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【ビジネスと人権】日本語教育の“その後”を支える仕組み ――講習だけで終わらない、現場で育てる言語支援とは?  外国人労働者と人権 第25回(2025/7/21)

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「日本語講習は済んだから、もう十分話せるはず」
「仕事は日本語を覚える場でもある」――

そう考える現場が少なくない中、
日本語能力が伸び悩み、意思疎通や定着に課題を感じている現場もまた増えています。

今回は、育成就労制度における「日本語支援」の継続的なあり方について、
制度上の要請と現場実務のギャップ、そしてBHR(ビジネスと人権)の視点を交えて考えます。

 


🎯 なぜ「継続的な日本語支援」が必要なのか?

入国前後の講習で基本的な挨拶や業務指示を学んでも、
実際の職場では、こんな言葉の壁が待っています:

つまり、講習での学習は「基礎に過ぎない」のです。
現場での定着・キャリア形成には、日常業務で育てる日本語が欠かせません。

さらに、育成就労から**「特定技能」へステップアップ**する場合、
日本語能力(N4相当以上)と技能評価試験の合格が要件となるため、
日本語力の向上は本人の将来を左右する現実的な課題でもあります。

 


📘 制度設計上も「継続支援」が前提に

育成就労制度では、以下のような項目が明記されています:

これは単なる教育義務ではなく、
言語こそがキャリアの前提であるという制度上のメッセージともいえます。

 


💬 BHRの観点:「言語格差」も人権課題

国際労働機関(ILO)や国連のBHR原則でも、
「言語や文化の壁によって必要な情報や権利が届かないこと」が人権リスクとして指摘されています。

これらはすべて、**「言葉が届かない」**ことから始まります。
だからこそ、日本語支援は単なる業務支援ではなく、人権保障の一部と捉える必要があります。


🛠 具体的に取り組みたい支援のかたち(オンライン学習を含む)

支援内容

実施主体

工夫のポイント

職場内ミニ講座

企業

110分、やさしい日本語で

日常会話サポート

先輩社員

昼休みに雑談を促す場をつくる

翻訳アプリやタブレット活用

支援機関

用語集・マニュアルの多言語化

オンライン学習の導入

企業・本人

スマホやPCで自主学習/夜勤明けでも受講可能

外部日本語教師の派遣

支援機関・自治体

教育予算の申請と連携がカギ

日本語能力試験(JLPT)対策支援

双方

目標設定と費用補助でモチベUP


🔍補足:オンライン学習のポイント

 


👥 職場の誰が関わるべきか?

「日本語指導の専門家がいない」と悩む現場も多いですが、
重要なのは全体で支えるという姿勢です。

こうした小さな配慮の積み重ねが、定着・信頼・生産性の向上に直結します。

 


🚧 補足:支援を尽くしても成果が出ない場合は

現場や支援機関が最善を尽くしても、
本人の日本語能力やその他のスキル向上が著しく見られない場合もあります。

その際は以下のような対応を冷静に検討する必要があります:

支援し続けることと責任ある見直し判断は矛盾しません。
「誰にとっても無理のない関係性を築くこと」は正当な制度運用の一環です。

 


✍️BHR推進社労士からのひとこと

「言葉が通じないから仕方ない」――
そうあきらめたとき、信頼関係も育成も止まってしまいます。

外国人材にとって、「話せるようになること」は、
単に仕事のためではなく、「人として認められる」ための手段でもあります。

人権を尊重するとは、相手が伝えられる力を持てるように支援すること。
そのために、私たちはどんな環境・ツール・仲間を用意できるか?
育成就労制度は、その問いへの答えを現場に委ねているのです。

 


✍️この記事を書いた人

烏脇 直俊(からすわき なおとし)
BHR
(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)

外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。

「制度を使うだけでなく、活かす時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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