【ビジネスと人権】実践事例の“見える化”戦略 ――制度対応から信頼発信へ、企業の取り組みをどう伝えるか? 外国人労働者と人権第28回(2025/7/24)
🌿はじめに|制度を「やっている」だけでは伝わらない
BHR(ビジネスと人権)への対応は、
今や「やっていること」が当然視される時代に入りつつあります。
社内で制度を守るだけでは、ステークホルダーからの信頼、
人材の定着、採用競争力につながりません。
だからこそ重要なのは、
「どう伝えているか」「誰に届いているか」という視点です。
今回は、外国人材支援やBHRの実践を「信頼」「評価」「人材確保」につなげる
“見える化(可視化)”の戦略と実務をお伝えします。
✅ 1|なぜ今、「見える化」が求められるのか?
背景 |
内容 |
採用競争の激化 |
SNS・口コミ・人材紹介会社での評判が左右する |
ESG・人権開示の潮流 |
サプライチェーン上の透明性が国際的要請に |
地域からの目 |
「どんな企業が来ているのか」への市民の関心 |
外国人本人の期待 |
企業文化や支援制度を見て職場を選ぶ時代へ |
見える化は、単なるPRではなく、
“信頼を獲得し、誤解を防ぐ情報公開”としての役割があります。
✅ 2|【ビジネスと人権】の実践を見える化するには?
実践項目の例:
実践領域 |
見える化すべき内容 |
発信媒体 |
育成計画と評価 |
キャリア支援 昇給制度の透明性 |
ホームページ 社内報 |
日本語支援 |
学習プログラム 教材の紹介 |
SNS パンフレット |
相談体制 |
苦情対応フロー 担当者紹介 |
社内掲示 入職ガイド |
地域連携 |
地域イベント参加 自治体協定 |
プレスリリース ローカル紙 |
外部監査 BHR研修 |
専門家との連携内容 |
持続可能性報告書 株主資料 |
✅ 3|“伝わる”ための見せ方3つの工夫
見せ方 |
ポイント |
ストーリー化 |
「なぜ始めたのか」「何を大切にしているのか」を語る |
写真・動画 |
外国人本人の声、日常風景の写真がリアルな説得力 |
デザイン性 |
多言語・やさしい日本語、視覚で伝えるインフォグラフィック |
✅ 4|外部発信と社内浸透を両輪に
外部向け発信:
- 採用・広報・ステークホルダー対応としての戦略的活用
- 「外国人が選ぶ企業」としての信頼構築
社内向け浸透:
- 従業員全体の理解と協力を得るために、取組の“理由”と“意味”を丁寧に共有
- 日本人社員への「なぜここまでするのか?」への説明が信頼形成につながる
✅ 5|“伝わる企業”が選ばれる時代へ
かつては「制度に対応していればOK」でした。
今は「制度を活かして、どんな価値を生み出しているか」が問われています。
評価されるのは“やっていること”だけでなく、“伝えていること”。
BHRの本質は、“外からも中からも信頼される”組織文化をつくることにあります。
✍️BHR推進社労士からのひとこと
見える化とは、単なる広報ではありません。
それは「私たちはこの制度を、誰のために、どんな想いで運用しているか」という姿勢の開示です。
制度対応を「負担」ととらえるか、「発信資源」ととらえるか。
その差が、5年後の企業価値と人材確保に確実に影響します。
「伝わる制度運用」で、信頼と定着をともにつくっていきましょう。
✍️この記事を書いた人
烏脇 直俊(からすわき なおとし)
BHR(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)
外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。
「制度を“使う”だけでなく、“活かす”時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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