【ビジネスと人権】監理支援機関の役割はどこまで進化するのか? ――制度管理者から「人権の専門支援者」への転換点 外国人労働者と人権第29回(2025/7/25)
🌿はじめに|監理団体から「監理支援機関」へ――変化の本質は?
育成就労制度では、これまでの監理団体が「監理支援機関」へと再編され、
その役割は単なる制度監視者から、現場を支える伴走者へと大きく変わろうとしています。
とくに注目すべきなのは、
“人権配慮”や“外部監査”が制度要件として明記された点です。
今回は、制度改正の背景を踏まえつつ、
監理支援機関に求められる【ビジネスと人権(BHR)】対応の要点と、
「現実的に何をすべきか」を整理します。
✅ 1|なぜBHR対応が監理支援機関の役割になったのか?
観点 背景・理由
制度信頼性の回復 技能実習制度の国際的批判、ハラスメント・退職強要などの人権問題
外部監査義務化 監理支援機関に第三者視点の導入を求める動き
国際的潮流 国連「ビジネスと人権指導原則(UNGPs)」、ILO指摘、日本政府のNAP
実効性の担保 「書類上OK」ではなく「現場が変わる」ための仕組みが必要
✅ 2|監理支援機関に求められるBHR的視点とは?
BHRにおいて、監理支援機関は企業と外国人の間に立つ“橋渡し役”として、以下のような観点が重要になります。
求められる役割:
機能 内容
定期モニタリング 労働時間・賃金・日本語教育・相談対応の実態把握
苦情対応支援 母語対応の仕組み構築、外部通報の連携、封じ込めの抑止
育成計画支援 現実的で成長可能性のある計画作成をサポート
現場支援 受入企業のBHR理解促進、従業員向け研修・対話の設計
外部監査への備え 記録整理、制度運用の検証、第三者からの指摘への対応
✅ 3|「制度を見張る立場」から「現場とつなぐ支援者」へ
旧来の監理団体のイメージ:
- 企業に「ダメ出し」する存在
- 形式点検・書類審査が中心
- 実習生との信頼関係が薄い
これからの監理支援機関に求められる姿:
- 企業・現場の改善に寄り添うパートナー
- 外国人本人の声を聴き、伝える代弁者
- 人権・キャリア・地域共生の視点を持つファシリテーター
✅ 4|実践のためのチェックポイント5つ
観点 自己点検ポイント
苦情対応 窓口は「機能」しているか?相談実績はあるか?
モニタリング 現場の“空気”まで見ているか?聞き取りは母語か?
相談支援 外国人が「信頼できる人」に出会えているか?
研修 自分たち自身がBHRやUNGPsを理解しているか?
協働関係 専門家・地域・行政と連携できているか?
✍️BHR推進社労士からのひとこと
監理支援機関の真価は、**「制度を守らせる力」ではなく「現場を変える力」**にあります。
外国人と企業、支援者と制度、地域と現場――
その“間”を丁寧につなげる立場こそ、BHR時代の支援機関の使命です。
制度が変わるだけでは、何も変わりません。
変えるのは、制度に関わる“人”と“意志”です。
✍️この記事を書いた人
烏脇 直俊(からすわき なおとし)
BHR(ビジネスと人権)推進社労士 / 外国人技能実習制度 外部監査人 / 行政書士(有資格・未登録)
外国人技能実習制度・育成就労制度を「人権の観点」から支援することを専門とする社会保険労務士。
監理団体・企業・自治体と連携し、制度対応から実務改善、職場の人権環境整備まで幅広くサポート。
「制度を“使う”だけでなく、“活かす”時代へ。」
制度改革に前向きに取り組みたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
📩 無料相談・お問い合わせフォームはこちら
ビジネスと人権に取組むBHR推進社労士の魅力はコチラ
🔜 次回予告(最終回)
通算第30回・最終回
【ビジネスと人権】育成就労制度を「活かす」企業・支援機関とは?
――制度の“その先”にある、信頼と共生の未来像
≪ 【ビジネスと人権】育成就労制度を“活かす”企業と支援機関とは? ――制度の“その先”にある、信頼と共生の未来像 外国人労働者と人権 第30回最終回 | 【ビジネスと人権】実践事例の“見える化”戦略 ――制度対応から信頼発信へ、企業の取り組みをどう伝えるか? 外国人労働者と人権第28回 ≫