過去最多の監督指導が示す警鐘 ― 技能実習とビジネスと人権(BHR)の課題(2025/8/28)
外国人技能実習に対する監督指導、過去最多 ― BHRの視点で考えるべきこと
関東甲信越地方の労働局は、令和5年に実施した外国人技能実習生の受入れ事業場に対する監督指導状況を公表しました。監督件数は2,224件に達し、過去10年で最多。背景には、出入国管理機関からの通報の増加があります。令和5年の通報件数は前年比1.9倍の596件。現場での問題が表面化していることがわかります。
違反率は7割超、内容は日本人労働者にも共通
監督を受けた事業場のうち、約75%で法令違反が確認されました。最多は「安全関係」で33.4%、次いで「労働時間」22.0%、「割増賃金」21.8%。
特徴的なのは、違反は外国人技能実習生だけでなく、日本人労働者にも及んでいるという点です。つまり「外国人雇用だから特別に問題が起きている」のではなく、職場全体の労務管理の脆弱さが露呈しているのです。
通報を端緒とした是正指導
通報を契機に監督が入り、違法な長時間労働が発覚したケースもあります。たとえば金属建築部材製造業の事業場では、ベトナム人実習生に対し、月125.5時間の違法な時間外労働が確認されました。寄宿舎設置届の未提出も同時に発覚。これは「安全な労働環境」や「適切な生活環境」の確保ができていない典型例です。
BHR(ビジネスと人権)の視点
BHRの観点から整理すると、次の点が浮かび上がります。
人権侵害は外国人だけの問題ではない
外国人労働者の状況を調べると、日本人労働者の環境改善にも直結します。安全・健康・適正労働時間は企業の最低責任
ILOガイドラインや国連「ビジネスと人権指導原則」に照らせば、これは「最低限の人権尊重」にあたります。通報件数の増加は企業リスクの可視化
「声を上げられる仕組み」が社会に根付いており、隠すことはもはや不可能。コンプライアンス違反はブランド価値を直撃します。
まとめ
監督指導の数字は単なる統計ではなく、職場が人権尊重経営に転換できているかどうかのバロメーターです。外国人技能実習生を含むすべての労働者に「安全・安心な職場」を提供することは、もはや法令遵守の枠を超え、企業の存続や信頼に直結するテーマです。
BHRの実践はリスク管理であると同時に、持続的な経営への投資。
今回の監督指導結果は、企業にその事実を改めて突きつけています。
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