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特定技能の監督指導、76%が法令違反──見えてきた問題点  BHR推進社労士の視点(2025/10/10)

厚生労働省は、特定技能外国人を使用する事業場に対して昨年1年間に実施した監督指導の結果を公表しました。全国で計5,750事業場を調査したところ、76.4%にあたる4,395事業場で労働基準関係法令の違反が発覚。主な違反は「機械等の安全基準」「割増賃金の不払い」「健康診断後の医師意見聴取」「労働時間」などで、特定技能の現場が決して“例外”ではないことを示しています。

特に社会福祉施設や建設業では割増賃金関連、食料品・工業製品製造では安全基準違反が目立ちました。
厚労省が特定技能の監督結果を公表するのは初めてであり、その数字は衝撃的です。

私がBHR(ビジネスと人権)推進の立場から注視しているのは、大手バイヤーの多くが「日本国内における人権侵害の最大リスクは外国人雇用である」と認識しているという点です。

特定技能外国人の雇用現場における法令違反の多発は、単なる労務管理の不備ではなく、企業の人権デューデリジェンス(人権リスクの特定・評価・是正)不在の結果といえます。つまり、BHRの視点が制度と現場の両方で欠けているのです。

特定技能制度では、外国人の生活や職場環境を支えるために登録支援機関が設けられています。
しかし、今回の結果をみる限り、支援は十分に機能していません。
形式的な「定期面談」や「生活相談」は行われていても、安全・賃金・労働時間といった人権リスクの把握と改善までは踏み込めていません。

支援の名の下に行われているのは、実質的に行政手続きの代行であり、BHRの中核である「人権の保護と回復」という視点が欠けています。

また、多くの監理団体が登録支援機関を兼ねています。

つまり、監理団体こそがBHRの理解を深め、外国人に選ばれる日本をつくる最前線に立つべき存在です。

今後の育成就労制度では、より一層人権尊重が求められるのは当然の流れです。

今回の76%という数字は、単なる法令違反率ではありません。
それは、「支援制度の枠組みの中にBHRが存在しない」という構造的問題を映しています。

外国人雇用を“人材確保策”から“人権尊重経営の実践領域”へと転換すること。
それが、企業の持続可能性を支える新たな競争力になります。

制度や法改正の議論も大切ですが、
何よりも必要なのは、「現場を支える仕組みに人権の視点を埋め込む」ことです。

監理団体・登録支援機関・受入企業のすべてが、
“外国人の人権を守ることが企業の信頼を守ること”と理解できたとき、
日本はようやく「人に選ばれる国」になります。

BHRを知らずして、真の支援はありません。
今こそ、支援の在り方そのものを問い直す時期ではないでしょうか。

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