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個人事業者の労災報告義務化から考える「ビジネスと人権」 ~ BHR推進社労士の視点(2026/1/16)

2024年12月、厚生労働省は改正労働安全衛生法に関する説明会を開催し、その中で、個人事業者の業務災害に関する新たな報告制度について説明がありました。

この改正では、下請けなどの個人事業者が業務中に休業4日以上の死傷災害に遭った場合、その災害を元請けなどの「特定注文者」が労働基準監督署へ報告することが義務付けられます。
施行は令和9年(2027年)1月が予定されています。

これまで、労働災害の報告制度は「労働者」を前提とした仕組みが中心でした。そのため、個人事業者が現場で重大な事故に遭っても、制度の外に置かれてしまうケースが少なくありませんでした。

今回の改正は、そうした状況に一つの区切りをつけるものだと感じています。


「把握できた情報はすべて報告を」

説明会では、厚労省の担当者から
「被災者の年齢などが分からなくても、それ以外に把握した情報はすべて報告してほしい」
という説明がありました。

報告内容には、発生日時や場所、被災者の氏名・年齢のほか、個人事業者の場合は労災保険の特別加入の有無や番号なども含まれます。

この姿勢からは、形式的な完璧さよりも、災害をきちんと把握し、見える形にすることを重視していることが伝わってきます。


BHR(ビジネスと人権)の視点で見ると

BHRでは、「労働者かどうか」ではなく、
企業の事業活動に関わるすべての人が人権の主体であるという考え方をとります。

下請けの個人事業者も、

であることに変わりはありません。

今回の制度改正は、
個人事業者も大切なステークホルダーである
というメッセージを、法律の形で示したものといえるでしょう。


「安全な環境づくり」は元請けの役割でもある

災害が起きたとき、報告義務が課されるのは、個人事業者本人ではなく「特定注文者」、多くの場合は元請け企業です。

これは、

を踏まえた制度設計だと感じます。

BHRの観点でも、安全な労働環境を整えることは企業の基本的な責任です。
それは雇用しているかどうかにかかわらず、事業に関わる人すべてに向けられるものです。


人権対応は「特別なこと」ではなくなってきている

BHRという言葉は、まだ少し堅く感じられるかもしれません。
ただ、今回の改正を見ていると、

といった当たり前の対応が、少しずつ制度として整えられてきているように思います。

個人事業者の労災報告義務化は、
「人を守る視点」が法律の中に静かに広がっていることを感じさせる改正です。

これからの安全衛生や法令対応を考えるうえで、
「ビジネスと人権」という視点も、自然に意識される時代になってきているのかもしれません。


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