外国人労働者の労災増加から考える人権デュー・ディリジェンス|サプライチェーン全体で取り組む安全な職場環境(2026/6/2)
宮崎労働局は、外国人労働者の労働災害が増加傾向にあることを受け、多言語対応の安全衛生教育マニュアルなどを紹介するリーフレットを作成し、事業者に対して注意喚起を行っています。
令和7年において、休業4日以上の労働災害に被災した外国人労働者は47人で、前年より11人増加しました。また、年千人率は4.84となり、日本人を含めた全労働者の年千人率3.82を上回っています。
宮崎労働局は、その要因として、
・災害発生率の高い業務への従事
・経験不足や未熟練によるリスク
・小規模事業場における安全管理体制の課題
などを挙げています。
さらに注目すべき点として、外国人労働者を雇用する事業所のうち、「30人未満」の事業所が全体の約6割を占めていることが報告されています。
外国人労働者は脆弱な立場に置かれやすい
外国人労働者の多くは、
・日本語能力の問題
・安全衛生教育の理解不足
・経験の浅さ
・雇用主との力関係
などから、労働災害のリスクが高くなりやすい傾向があります。
もちろん、外国人であること自体が危険なのではありません。
しかし、情報へのアクセスや教育機会が十分でない場合、人権上のリスクが高まることは否定できません。
私はこれまで、ビジネスと人権(BHR)の視点から、「安全で健康的な労働環境」は人権尊重の重要な柱であるとお伝えしてきました。
労働災害は単なる安全管理上の問題ではありません。
生命や健康に関わる基本的人権の問題でもあります。
小規模事業場だけの問題ではない
今回の記事で特に重要だと感じたのは、外国人労働者が30人未満の小規模事業場に集中しているという事実です。
これは決して宮崎県だけの特殊事情ではないでしょう。
日本企業の大多数は中小企業であり、外国人労働者の多くがそうした企業で働いています。
一方で、小規模事業場では、
・安全衛生担当者を専任で配置できない
・教育資料を多言語化する余裕がない
・人手不足により教育時間を確保しにくい
といった現実的な課題があります。
決して事業主の意識が低いからではなく、リソース不足によって十分な対応が難しい場合も少なくありません。
人権デュー・ディリジェンスの本質
ここで改めて考えたいのが、人権デュー・ディリジェンス(人権DD)の考え方です。
近年、大企業を中心に人権DDへの取組が進められています。
しかし、人権リスクは必ずしも大企業の本社で発生するとは限りません。
むしろ実際には、サプライチェーン上の中小企業や協力会社において発生するケースが少なくありません。
外国人労働者の労災リスクも、その典型例の一つといえるでしょう。
発注企業が「法令遵守を求めています」と通知するだけでは十分とは言えません。
協力会社が抱える課題を理解し、
・多言語教育資料の提供
・安全教育の支援
・専門家との連携
・対話による課題把握
などを通じて、共に改善していく姿勢が求められています。
対話による支援こそ重要
宮崎労働局が多言語対応の資料を提供していることは非常に意義のある取組です。
しかし、それだけで全ての課題が解決するわけではありません。
資料を渡すだけではなく、
「現場で本当に理解されているか」
「教育は実施されているか」
「危険な作業に外国人労働者だけが集中していないか」
を確認しながら対話を重ねることが重要です。
私は、サプライチェーン全体で人権尊重を進めるためには、監査だけではなく対話による支援が不可欠であると考えています。
外国人労働者の労災増加というデータは、単なる統計ではありません。
それは、私たちに対し「誰一人取り残さない労働環境をどのように実現するのか」を問いかける重要なメッセージではないでしょうか。
※出典:労働新聞(2026年6月2日)、宮崎労働局発表資料
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