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育成就労制度の外部監査を「人権尊重」から考える―社会保険労務士の役割―(2026/8/9)

2027年4月、育成就労制度が始まります。

技能実習制度から育成就労制度への転換については、制度や手続の変更に注目が集まりがちです。

しかし、私はこの制度を考えるうえで、もう一つ大切な視点があると考えています。

それは、外国人労働者の人権をどのように守るのかという視点です。

そして、この視点から考えると、育成就労制度における外部監査人は、社会保険労務士の専門性を大いに活かすことのできる業務ではないでしょうか。

世界で進む「ビジネスと人権」

企業活動における人権尊重は、世界的な潮流となっています。

2011年には国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が国連人権理事会で支持され、日本政府も2020年に「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定しました。

企業には、自社で働く人だけでなく、取引先やサプライチェーンなど、企業活動に関係する人々への人権への負の影響にも目を向けることが求められる時代になっています。

その中でも、特に注意が必要なのが国境を越えて働く移住労働者です。

言葉や文化の違い、在留資格、送り出し国で負担した費用、雇用主との力関係などによって、移住労働者は弱い立場に置かれることがあります。

これは日本も例外ではありません。

技能実習制度で指摘されてきた問題

日本の技能実習制度については、これまで国内外から様々な問題が指摘されてきました。

政府の有識者会議でも制度の課題や国際的な指摘について検討が行われ、技能実習生の妊娠・出産をめぐる不適正な取扱いなどについても実態調査が行われています。

もちろん、すべての実習実施者や監理団体に問題があったわけではありません。技能実習生を大切にし、適正な労務管理に努めてきた企業や監理団体も数多くあります。

一方で、制度全体として様々な課題が指摘されてきたことも事実です。

その検証を経て、新たに創設されたのが育成就労制度です。

育成就労制度の根拠となる法律の名称にも、

「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護」

という言葉が明記されています。

育成就労制度においては、制度を適正に運営することと、その中で働く外国人を一人の労働者として保護することの双方が重要になります。

社会保険労務士法にも「個人の尊厳」が明記された

ここでもう一つ、大きな変化があります。

2025年6月に成立した社会保険労務士法改正です。

この改正では社会保険労務士の使命に関する規定が新設され、

「適切な労務管理の確立及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成」

に寄与することが、その使命として位置付けられました。

さらに同じ改正では、事業における労務管理その他の労働に関する事項について監査する、いわゆる**「労務監査」も社会保険労務士の業務として明記されました。**

「個人の尊厳」と「労務監査」。

この二つが明確になったことは、育成就労制度における外部監査を考えるうえでも重要だと私は考えています。

育成就労制度の外部監査と社会保険労務士

育成就労外国人も、日本で働く一人の労働者です。

社会保険労務士が日常的に扱う、労働時間、賃金、休日・休暇、安全衛生、社会保険、労働条件、職場環境などは、育成就労外国人の権利と密接に関係しています。

外部監査では、書類が存在することだけを確認するのではなく、実際の労務管理との整合性を見ることが重要です。

賃金台帳と勤怠記録は一致しているか。

適正な労働時間管理が行われているか。

安全で健康に働ける環境になっているか。

差別やハラスメント、不適切な取扱いはないか。

そして、問題が確認されたのであれば、明確に指摘し、適切な改善方法を示す。

こうした監査には、社会保険労務士の専門性を大いに活かすことができます。

もちろん、育成就労制度の外部監査人は社会保険労務士だけが担うものではありません。

弁護士、行政書士をはじめ、それぞれの専門家には異なる強みがあります。

そのうえで、育成就労制度が「外国人を雇用し、育成する制度」であり、その中心に労働者としての権利保護があることを考えると、労働・社会保険と職場の労務管理を専門とする社会保険労務士は、外部監査人として非常に親和性の高い専門職の一つだと考えています。

BHRの視点を外部監査にも

私は、BHR(ビジネスと人権)推進社労士として活動しています。

BHRでは、人権への負の影響を把握し、防止・軽減し、必要な改善につなげていくことを重視します。

この考え方は、育成就労制度の外部監査とも非常に親和性が高いものです。

制度を見る。その先にいる「人」を見る。

問題があれば指摘し、改善につなげる。

技能実習制度で指摘されてきた様々な課題を踏まえて始まる育成就労制度だからこそ、外部監査も形式的なチェックで終わらせず、人権尊重につながる監査であることが大切ではないでしょうか。

烏脇社会保険労務士事務所では、愛知県・名古屋市を中心に、育成就労制度における監理支援機関の外部監査人業務をお引き受けしています。

社会保険労務士としての労務管理の専門性と、BHR推進社労士としての人権尊重の視点を活かし、独立した第三者として客観的かつ厳格な外部監査を行ってまいります。

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