【事例解説】奨学金返還支援が拡大|人材確保とBHR(ビジネスと人権)の視点(2024/1/18)
■ 奨学金返還支援の拡大と企業の役割
地場企業の若手人材獲得を後押しするため、地方自治体で企業による奨学金返還支援を奨励する取組みが広がっている。愛知県は来年度から、中小企業が代理返還を行ったり、返還に充てるための手当を支給した場合、1人当たり最大年20万円を3年間交付する施策を始める。社内制度化に向けて規定の整備を促す長野県では、助言を行う相談窓口を設置した。企業と返還費用額を折半する施策を進めてきた岩手県は、今年度から業種で限定していた対象範囲を拡大し、子育て両立に積極的であるとして県の認証を得た企業を追加した。
愛知県は今年4月から、中小企業が奨学金返還のために支給した手当や、代理返還した額の2分の1を補助する。今年4月以降に採用した人材を対象とするもので、補助上限額は従業員1人当たり年20万円とし、3年間にわたって支給する。1社当たりの補助人数に上限は設けない予定だ。
補助金の支給には、県への事前登録を要件とする。登録企業は県のホームページで公表し、企業のPRにもつなげていく。大村秀章知事は会見で「奨学金返還支援制度があることは、学生が企業選びをする際の大きなポイントになる」と強調している。
返還支援制度の導入を促す長野県では、相談窓口を設置するほか、県のホームページで規定例を紹介している。制度として手当を設ける場合と、代理返還を行う場合の2種類を用意した。
規定を整備し、子育て支援に積極的な企業を認定する「くるみん」など、国や同県の認定を取得した場合、補助金を交付する。補助率は愛知県と同じ2分の1で、上限額は1人当たり年10万円とし、最長で5年間助成を行う。1社当たりの上限人数は年間3人とした。
岩手県では令和2年から、返還費用相当額(最大250万円)を企業と2分の1ずつ負担する事業を行っている。8年間継続勤務する見込みである35歳未満の若年者が対象になる。認定企業が対象者を採用した場合、補助金を交付する。今年度からは認定企業の範囲を拡充した。従来は製造業など特定の業種に限っていたが、同県が進める「いわて子育てにやさしい企業」の認証を得た企業を追加している。
(以上 労働新聞より)
■ BHR(ビジネスと人権)の視点からの考察
この施策は、一見すると「人材確保のための福利厚生」のように見えます。
しかし、ビジネスと人権(BHR)の観点から見ると、その意味は大きく異なります。
■ 教育と機会へのアクセスという人権
奨学金の問題は、単なる個人の借入の問題ではありません。
👉 教育を受ける機会と、その後の人生の選択に直結する問題
です。
多くの若年労働者が、社会に出る段階で数百万円の債務を抱えている現状は、
👉 経済的な制約がキャリア選択に影響を与える構造
とも言えます。
■ 企業が関与する意味
今回のように企業が奨学金返還支援に関与することは、
👉 単なる人材確保施策ではなく、「機会の公平性」への関与
とも評価できます。
つまり、
- 働くことで返済負担が軽減される
- 将来設計の自由度が高まる
👉これは
労働者の尊厳や選択の自由を支える取り組み
と位置付けることができます。
■ 「選ばれる企業」から「責任ある企業」へ
記事中でも指摘されている通り、
奨学金返還支援制度は、企業選びの重要な要素になりつつあります。
しかしBHRの視点では、
👉 「選ばれるための制度」ではなく「企業の責任」としての制度
へと変化していく可能性があります。
■ 地方自治体の役割
今回の特徴は、地方自治体が積極的に関与している点です。
- 補助金の支給
- 制度設計の支援
- 認証制度との連動
👉これは
企業単独では難しい人権課題に対する「公的支援モデル」
とも言えます。
■ 今後の展開
今後は、
- 奨学金返還支援
- 住宅支援
- 子育て支援
といった施策が、
👉 「福利厚生」から「人権配慮」へ
と位置付けが変わっていく可能性があります。
■ まとめ
今回の施策は、
- 人材確保施策
であると同時に
👉 若年労働者の経済的負担を軽減し、機会の公平性を高める取組み
と見ることができます。
企業にとっては、
👉 「人を確保する」だけでなく「人を支える」視点
が求められる時代に入っているのではないでしょうか。
■ 出典
・『労働新聞』
「奨学金返還支援 企業向け助成事業活発化」
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