ブログ

【データ分析】精神疾患が3倍に増加 傷病手当金から見るメンタル不調の実態 (2024/10/17)

■ 精神疾患の増加が止まらない現状

(労働新聞を基に整理)

協会けんぽが公表した令和5年度の傷病手当金の給付状況によると、給付額は約297億円となり、前年度から約32億円減少した。これは、新型コロナウイルス関連の給付が大幅に減少したことが主な要因である。コロナ関連の給付額は、前年度の約56億円から約6億円へと、約9分の1にまで減少している。

しかし、コロナを除いた給付総額は増加が続いている。
令和元年度以降の推移を見ると、

・元年度:約213億円
・2年度:約246億円
・3年度:約255億円
・4年度:約273億円
・5年度:約290億円

と、明確な右肩上がりとなっている。


■ 増加の主因は精神疾患

この増加を牽引しているのが精神疾患である。

令和5年度の精神疾患による受給件数は約6万件に達し、

・平成30年度:約3万件 → 約2倍
・平成22年度:約2万件 → 約3倍

と、大幅な増加が続いている。

さらに、傷病手当金全体に占める割合も上昇しており、

・件数ベース:約39.6%
・給付額ベース:約43.2%

と、いずれも4割前後を占めるまでに拡大している。
平成22年度と比較すると、約15ポイントの上昇である。


■ 制度全体への影響

傷病手当金が保険給付全体に占める割合も上昇している。
平成30年度には3.5%だったものが、令和4年度には4.8%にまで拡大した。

現時点では制度全体への影響は限定的といえるが、このまま増加が続けば、将来的には保険料率の引上げにつながる可能性は否定できない。

現在の協会けんぽの平均保険料率は約10%であり、多くの中小企業にとっては既に負担の大きい水準である。今後は、

・最低賃金の上昇
・平均賃金1500円への引上げ議論
・子育て支援金の拠出開始

など、企業負担の増加要因が重なることも見込まれている。


■ メンタルヘルス対策の重要性

精神疾患による傷病手当金は、財政面だけで見れば影響は限定的かもしれない。しかし、

・休職者の増加
・生産性の低下
・人材の離脱

といった影響を考えると、企業経営へのインパクトは極めて大きい。

メンタルヘルス対策を進めることは、

・休職者の減少
・生産性の向上
・賃金水準の改善

といった好循環にもつながる。


■ 今後求められる対応

協会けんぽの6年度事業計画では、産業保健総合支援センターとの連携によるメンタルヘルス対策の推進が掲げられている。しかし、現状の増加ペースを踏まえると、より踏み込んだ対応が求められる段階に来ている。

具体的には、

・健診データとレセプトデータの活用
・業種別・年齢別分析
・リスクの高い業種への重点対策

など、データに基づいた施策が重要となる。

また、保険料率に反映されるインセンティブ制度の指標として、

・ストレスチェック実施率
・メンタルヘルス対策実施企業割合

といった項目を組み込むことも検討に値する。


■ まとめ

精神疾患による傷病手当金の増加は、

・個人の問題ではなく
・企業の問題であり
・社会全体の構造的課題

である。

今後は、財政面だけでなく、生産性や労働環境といった広い視点から、実効性のある対策が求められる。


【制度解説】傷病手当金 精神疾患が4割に増加→コチラ

【職場での自殺対策】すべての企業の人事・・・→コチラ

【若者の死因1位は自殺】→コチラ

BHR推進社労士が企業にどのような価値を提供できるかについては、
「ビジネスと人権に取り組むBHR推進社労士の魅力」で整理しています。

人権調査票やサプライチェーン調査への実務対応については、
「人権デューデリジェンスとは?中小企業が対応すべき調査票と外国人雇用リスク」で整理しています。


このページのトップへ